「人体の不思議展」を考える京都ネットワーク
設立趣意書
「人体の不思議展」が、2010年12月4日から2011年1月23日まで京都市勧業館「みやこめっせ」で開催されています。遺体(死体)のプラストミック標本を展示する「人体の不思議展」は、これまでも、遺体の尊重ならびに人間の尊厳を著しく傷つけている、として厳しく非難されてきました。
遺体に対しては礼意を持って接しなければならない、これは基本的な社会常識です。にもかかわらず、「人体の不思議展」では、興味本位ともいえるポーズをとらされた遺体の全身標本や触ることのできる標本が展示されています。しかも、入場料1500円を徴収し、会場売店で臓器や骨格模型のキーホルダーを販売するなど、同展は明らかに営利を目的とした興行として開催されます。これは死体の商品化であり、死者に対する冒涜です。
主催者は「本展に展示されている人体プラストミック標本は、すべて生前からの意志(ママ)に基づく献体によって提供されたものです」と謳っていますが、来場者など第三者がその意思を確認できるものは、何ら示していません。そもそも「医学及び歯学の教育のための献体に関する法律」で定めている「献体の意思」とは、死後に自分の身体を医学・歯学教育のために提供することの意思表示です。「人体の不思議展」のように不特定多数の人の前に、営利目的で、人体標本として展示することは、生前の献体の意思を踏みにじる非倫理的行為です。
そしてなにより「人体の不思議展」主催者は「死体解剖保存法」に違反しています。この法律は、死因の調査や医学・歯学教育のために死体を解剖・保存するにあたって、解剖者の資格や解剖場所、保存の条件等を定めています。しかしながら「人体の不思議展」展示の死体標本が中国で作製されたことから、日本の法律である「死体解剖保存法」の適用外と考えられてきました。ところが、同法第19条は、一般に死体を保存しようとする場合、遺族の承諾を得た上で、保存地の都道府県知事(京都市では市長)の許可を得なければならないと定めています。これに違反した者は同法第23条により罰金刑に処せられます。
「人体の不思議展」主催者は、今回、死体標本を「みやこめっせ」に展示・保存するにあたって京都市保健福祉局に対して京都市長の許可を申請していません。会場の「みやこめっせ」側にも死体保存場所を提供するという認識がまったく欠如しています。このように「人体の不思議展」主催者の行為は「死体解剖保存法」第19条に違反し、第23条の刑罰法規に該当します。
わたしたちは、生命の尊重ならびに人間の尊厳を重んじる立場から、死者を冒涜する違法な「人体の不思議展」を見過ごすことはできません。広く京都府民に「人体の不思議展」について考えてもらうことを訴えるために、「『人体の不思議展』を考える京都ネットワーク」を立ち上げました。
2010年12月16日
「人体の不思議展」を考える京都ネットワーク 呼びかけ人
小笠原 伸 児(京都法律事務所 弁護士) 宗 川 吉 汪(京都工芸繊維大学名誉教授)
関 浩(京都府保険医協会理事長) 宮 城 泰 年(聖護院門跡門主)
尾 崎 望(京都民主医療機関連合会会長) 林 光 一(京都府歯科保険医協会理事長)