おれんじ九州・おれんじ四国 (八幡浜〜臼杵)
 【九四オレンジフェリー株式会社】
 評価:★★★
ここまで快適に進化した短距離航路


          おれんじ九州(臼杵港)
旧九四フェリーボートの航路を引き継いだ九四オレンジフェリーとなってはじめての新造船。従来は並行する他社と比べて明らかに見劣りのする船だったのだが、オレンジフェリーが関西航路で旅客色の強いフェリーを就航させているだけあって、期待どおりにわずか2時間強の航路とは思えない程、豪華で快適なフェリーに仕上がった。本船就航を期に、上等級個室を部屋単位での発売する様に運賃体系が大幅に変更されている。2隻はほぼ同型ではあるが細部が異なっている。

平成19年就航。総トン数2900トン。
(利用時期:平成20年8月)
 Cabin〜船室は快適か?
等 級  設備・感想など
特 等 ・シャワー、トイレ(温水便座)付きのダブルルーム。定員は2名。テレビ、DVD付き。
・スリッパ、ティッシュペーパー、ボディーソープ、リンスインシャンプー、ドライヤーの用意あり。
(ホームページにはタオルや歯ブラシ等の用意があるように記載されていたが、実際には備えられていなかった。)
・ベッド幅はダブルサイズの140cmで、寝具は布団。シーツ類が毎回きちんと交換されているかは微妙な感じ。(シーツに髪の毛が残っていた。短時間での折り返しだから掃除が大変なので仕方ない面もあるか?でも滅多に利用者はいない筈だか・・・)
・放送音量の調節可能。空調の調節も可能で快適。
・船首の角部屋に位置しており、シャワー室は窓があり展望シャワー室となっている。シャワーの水圧は良くはないが、まあ、我慢の範囲内かと思う。濡れたタオルを持ち歩かなくていいように部屋にバスタオルの用意が欲しい。
・客室使用料1万円と、かなり高額なのだが、2人で使えば並行他社の特等とほぼ同額で、快適性はこちらの方が抜群に上なので、まあ納得できる。
・部屋面積の事情もあるのかも知れないが、ソファーが小さくなったとしてもダブルベッドよりもツインの方が良かったのではないかと思うが・・・。
・室内を全部消灯しても入口の照明が消えないので、就寝中に気になる。(長時間だったら電球を抜くけど・・・)
1等洋室 ・椅子席の6人定員の小部屋のようだ。船首側に位置する。
・昼間ならいいかも知れないが、深夜の仮眠には適さないかも?
1等和室 ・畳敷きの和室で6名定員。テレビ付き。
・スリッパ、定員分の毛布と柔らかい枕の用意あり。マットや敷き布団がないので固くて寝苦しい。並行他社程度に寝具を改善して欲しいと思う。
・大人が普通に眠るには3人位までかと・・・思いっきり詰めれば5人かな。
・特等とわずか2千円差でグレードが一気に落ちて割高感を特に感じる。
2等寝台 ・2段ベッドで、箱型の枕、毛布付き。シーツ類はない。
・「おれんじ九州」は向かいがない片面のみの寝台配置でなかなか良い。一方、「おれんじ四国」は対面にも寝台がある普通の2等寝台。
・ドライバー室として使われるからか、受付は当日窓口でとの事。発券の時は、ドライバー様と同室になるけど、いいですか?という感じで同意を求められる。
2 等 ・比較的小さく区分けされたカーペット敷きの部屋。ドアはなく完全に部屋になっているわけではないので相部屋感覚も少なくて快適な配置だと思う。箱型の枕、毛布、スリッパの用意あり。
・バリアフリー席以外にはテレビを設置していないのは、静かな船室、睡眠を確保するという意味では好感。テレビを見たい人は椅子席に行けばよい。
・第3甲板右舷側が女性、子供専用席に指定されている。
・別にリクライニングシート、テレビを備えた椅子席もある。
※特等、1等の個室は2等運賃プラス「客室使用料」となった。料金は1室あたり、特等1万円、1等が8千円。7月の運賃値上げでも据え置きされている。
特 等 特等室内シャワー室 1等和室
2等寝台(おれんじ九州) 2 等 2 等(椅子席)
 Public Space〜営業施設・公室は充実しているか?
公室名  設備・感想など
売店
エントランス
・便によっては女性の従業員も乗務しており明るい雰囲気。男性の身なりもきちんとしている。
・本日の海上模様(荒天時は注意事項とともに)の掲示がある。とても良い取り組みだと思う。
・深夜でも出港時は営業するとの事。昼間の便では比較的長く営業。
・おにぎりや弁当、時間帯によってはカレーライス、モーニングセットの販売もあり、食事の販売が強化されている。
・エントランスの一角は「軽食コーナー」となっており、ティーサーバー(お湯、お茶、冷水)あり。紙コップ無料。「おれんじ四国」では後方にもある。(おれんじ九州で2等寝台の場所)
・メニュー例:じゃこ天うどん500円(いつのまにか値上げされていた)、カレー500円、生ビール500円、コーヒー200円など。
自動販売機 ・ジュース120円、ビール(大)400円、ビール(小)300円。
・最近の傾向どおり、夜間はアルコール類の販売停止。もう慣れたし、仕方ないかなと。
・飲み物の他、アイスクリーム有り。
スカイ
ラウンジ
・第3甲板最後部がゆったりとしたサロン席となっている。
・2等椅子席を兼用。
マッサージ
コーナー
・最新のマッサージチェアー3席が並ぶ。・15分200円。
シャワー
ルーム
・男女別にそれぞれ1ヶ所、シャワールームがある。内側から鍵がかかる。水圧は良好だった。
・ボディーソープとリンスインシャンプー、ドライヤー備え付け。
・わずか2時間強の短時間の航路で、ドライバー様ではなく一般客が、しかも無料でシャワーを使えるのは、特筆に価するサービスだと思う。有料でもいいのでバスタオルのレンタルがあったら便利だと思う。
・入口のすぐ隣が2等室なのでやや入りにくいかも?
トイレ ・洋式のみで便座クリーナーあり。
・洗面所にはドライヤーあり。
・洋式だけの方がコストが安く、メンテナンスが楽なのは理解できるが1つでいいので和式も欲しい。
公衆電話 ・携帯が普及して時代の流れなのか、船舶公衆電話がない。
分煙の状況 ・個室も含めて客室内は禁煙で「喫煙コーナー」(煙草の自販機あり)のみ喫煙可。一般向けの喫煙コーナーは「おれんじ九州」では第3甲板だけだが、「おれんじ四国」では第2甲板のエントランスにも追加されている。
・上等級区画には座って喫煙できる「喫煙ラウンジ」がある。
※その他の設備:ゲームコーナー、ペット室、外部デッキへの扉は自動ドア
エントランスホール 案内所・売店 軽食コーナー
スカイラウンジ インターネットコーナー 喫煙ラウンジ
 Infomation〜船内案内・感想など
(NEW)この航路は1日7便と奇数便数なので、配船が固定されておらず、毎日交互に入れ替わる。新造船「おれんじ九州」就航当初は古い船と混在していたので、サービス格差が顕著だったのだが、ほぼ同型の「おれんじ四国」が就航してからは全便が快適な新造船となったので、配船を気にする事なく利用する事ができるようになった。ホームページでは同型となったいまでも配船表を公表してくれているので、船を選んで乗りたい数少ない物好きなヲタにも便利。

(NEW)個室でも禁煙との事で、上等級区画に喫煙ラウンジが存在する。その配置なのだが、右舷窓側に位置しており、船首と左舷に個室が並んでいる。船首に個室を4つ並べるのでなく、1等の1部屋を現在の喫煙ラウンジの場所に位置させて、逆に喫煙ラウンジを船首側に配置すれば並行他社のラウンジのような感じで上等級専用のフォワードラウンジとしても使えると思う。完成してから言っても遅いけど。

(NEW)携帯電話会社を利用したインターネット接続サービスを行っており、パソコンを持参すればケーブルを接続するだけでインターネットを利用することができる。個室では室内で、それ以外はエントランスのインターネットコーナーを利用。利用料金は無料との事。今回はパソコンを持参していなかったので利用できなかったが、次回は利用してみたい。

(NEW)車両甲板の甲板部員の接客態度が他社に比べて格段に良く感じる。一航士だけでなく、誘導員までもが軽く会釈してくれ、客室へ上がろうとするときにはエスカレーターの方向を手でさして教えてくれた。これはオレンジフェリーの関西航路からの影響だと思うが、以前の九四フェリーボートの記憶がある身としては国鉄がJRになったときのような印象を受けた。

八幡浜を深夜2時50分出港の便では臼杵港到着後も7時まで船内休憩が可能である。休憩時間の途中での下船も可能。車で乗船した場合でも発券窓口での申告で船内休憩が可能という嬉しいサービス。かなりの寝不足にはなるが宿代わりの利用もできる、とってもお得な便である。

本船就航を期に上等級の個室が「客室使用料」と完全な部屋売りになった。定員以下での利用にはかなりの割高感があるが、筋が通っているので諦めもつく。短距離航路の個室はこの方法が無難だと思う。ただ、価格設定にはやや疑問がある。特等の1万円はやや高いと感じるものの、設備が充実しているし清掃の手間もかかるのでまあ納得できるとしても、1等については8千円は高すぎると思う。当時の1等運賃3200円と2等1950円の差額6人分でも7500円なのにそれよりも高い。1室5〜6千円程度が適正な価格であると感じるが・・・。1等は特等と比べて清掃の手間は圧倒的にかからないので、ファミリー客やグループ客に気軽に利用しやすい価格で数多く販売した方が客の満足度は高まると思う。

上等級区画は利用者がいない場合は施錠されているようだが、内側からは鍵を持っていなくても施錠できる構造になっている。客がいたずらしないとも限らないので内側からも鍵がないと施錠できないように改良した方が良いと感じた。(カバーをかけるだけでも良い)

第3甲板右舷側が女性、子供専用席として確保されている。せっかくなら、エントランスからの通路入口の部分にドアか柵を設けて、利用者以外のその先への立入を遠慮してもらったらどうだろうか?個室を使う人には左舷側の通路を使ってもらえば特段大回りになるわけではないので支障はないと思う。

この辺りの短距離フェリーとしては初めて?フィンスタビライザーを装備。この辺りの海域は太平洋からのうねりの影響で船体が動揺することもあるので横揺れの軽減には威力を発揮できると思う。広告にある「夢の翼」という表現は、ちょっと誇張された感もあるが、揺れが緩和されることは間違いあるまい。
(追記:就航後むかえた台風の洗礼に、他社、他船が欠航してからも半日近く、本船のみが運航を続けた。フィンスタビライザーの威力で就航率の高さを証明したようだ。)

船内至る所にゴミ箱が設置されている。個室はもちろん、2等の区画ごとにまでである。並行他社はゴミ箱の数を減らして(1等室内まで封印)清掃を省力化しようとしているのだが、本船ではどこにでもゴミ箱があるので、実に気持ち良い。きちんとふたも付いている。しかも通路にどんと置くのではなく、目立たないように棚の中にゴミ箱を入れるように工夫している。

色々と苦言も述べたが、九州〜四国間の短距離航路で一番快適な異色の存在であることは間違いない。今回の新造船で並行他社の設備、サービスを大幅に上回ったので、これから互いに良い意味での競争をしてほしいと思う。(企業体力を消耗させるダンピング競争はもう懲り懲り)
   船 室 構 成 合 計
特  等  洋室2名×1室 2名
1  等  洋室6名×2室  和室6名×2室 24名
2等寝台  洋室12名×1室 14名×1室 (おれんじ四国は30名×1室) 26名
2  等  大部屋、その他 (おれんじ四国は合計411名) 433名
 更新履歴
H19.07.11 新規掲載
H20.08.29 評価を3点に減点。写真の一部を「おれんじ四国」のものに差し替え。

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