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牧太郎の大きな声では言えないが…

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牧太郎の大きな声では言えないが…:キミ、悪趣味だよ!

 簡易ブログ「ツイッター」の被害者が増えているらしい。

 例えば……高級ホテルの鉄板焼き屋でアルバイトをしている女子大生。有名人がお客になって現れると次から次へと「彼らの言動」をツイッターでつぶやく。「このまま泊まるようだよ」と報道?され“女遊び”が発覚したケースもある。業務上知り得た秘密は口外しないのがホテル従業員のおきて!なんて言っても、この種の若者には理解できないだろう。そんな時は「キミ、悪趣味だよ!」と言うことにしている。

 それにしても、恐ろしい世の中になったものだ。

 例の大桃・麻木ツイッター騒動は「悪趣味」の最たるもの。あいた口が塞がらなかった。去年の暮れ、タレントの大桃美代子さんがツイッターで「ショックだったのは、元夫が麻木久仁子さんと不倫をしていた事がわかったこと。先輩として尊敬していたのに、ショック」とつぶやいた。ご本人同士で「恨みつらみ」を言い合うのは結構だが、衆人環視の下でつぶやくのは悪趣味だ。

 「不倫」と疑われた麻木さんは“無罪請負人”の敏腕弁護士さんと一緒に記者会見。最高裁の判例を引き合いに「婚姻関係が破綻すれば不倫ということはない」と主張する。言わずもがなで……「ゴメン、アナタが彼と別れた後と思っていたの。でも、もう彼とは別れちゃったから許して」とでも言えばよいのに……色恋のツイッターに無味乾燥な法律で応じるなんて……悪趣味だ。

 それにしても一番の悪趣味は正義ぶった視聴者ではあるまいか?

 「過去の出来事」ではないか。正式に結婚して、すでに離婚している。何ら問題はない。それなのに「麻木さんをテレビに出すな!」と注文を付け、結果的に麻木さんの姿はテレビから消えた。

 生活権侵害ではないか?

 やたら正義ぶる視聴者の群れ。ある時は「力士の花札遊びは身内であっても許さない!」、ある時は「海老蔵のけんかは酒の上だが許さない!」……経済が疲弊し、人々の心が疲弊したのか……嫉妬深い人々?が有名人を刺す。

 年が明けて、こんな悪意さえ感じる騒動を吹き飛ばすように、うれしいニュースが飛び込んできた。列島に広がるタイガーマスクの善意。万歳!!

 とんちんかんなテレビ局が「タイガーは誰?」なんて放送する。それこそ悪趣味? 子どもでも心豊かな「マスク(仮面)」の意味は知っている。(専門編集委員)

毎日新聞 2011年1月18日 東京夕刊

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