2011年1月18日15時2分
CDショップタハラの店内。「いきものがかり」のコーナーはひときわ大きい。手前の花束はいきものがかりがスタッフに手渡したもの=神奈川県厚木市
いきものがかりのメンバー。左から水野良樹さん、吉岡聖恵さん、山下穂尊さん
優しいメロディーで幅広い世代から人気を集めている「いきものがかり」。その下積み時代のアルバムを初めて置き、ずっと応援してきた地元・神奈川県厚木市のCDショップ「タハラ」が、今月限りで閉店する。朝の連続ドラマの主題歌「ありがとう」が今春の選抜高校野球大会の入場行進曲にも選ばれた3人は12日に来店。風景を目に焼き付けるように店内を巡った。
いきものがかりがデビュー前に路上ライブをしていた小田急線本厚木駅から歩いて数分。1964年に開店した「タハラ」は楽器も販売し、音楽を志す地元の若者が集まる場でもあった。
一時は県内に7店舗を展開したが、インターネットからの通信販売やダウンロードで買うスタイルが広がり、昨年の売り上げはピーク時の3分の1程度に。昨年末、今月30日で閉店することを決めた。
「忙しいのに突然すみません」。12日午前、いきものがかりの3人が花束を抱えて店にやって来た。タハラはインディーズ時代の03年に出したグループの最初のアルバムを初めて置いてくれた店だ。以来、忙しくなった今も、時間を見つけて同店を訪れる。
閉店を知り、12日は久々の「里帰り」。店内を見て回ったり、スタッフと雑談したりして、40分ほど滞在した。リーダーの水野良樹さんは「ここで初めてギター買ったんすよ」。「僕も」と山下穂尊(ほたか)さん。年末にも1人で訪れたボーカルの吉岡聖恵さんは名残惜しそうに「さみしいなあ……」と口にしたという。
閉店を知り、ファンも詰めかけている。壁いっぱいに貼ったいきものがかりのポスターには、名古屋、福岡、福島……と各地から来たファンのメッセージがびっしり。25日間で約400を数える。
CDを出すたびにキャンペーンを張って応援してきた店長の町田良男さん(40)は「店として応援できなくなるのはさびしいが、愛されるバンドとして長く続けていって欲しい」と話す。(須田世紀)