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がん告知テーマに中3討論

2011年1月17日10時23分

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写真:がん告知について討論する田原総一朗さんと生徒たち=6日、東京都杉並区立和田中学校拡大がん告知について討論する田原総一朗さんと生徒たち=6日、東京都杉並区立和田中学校

 がんになったら、自分で告知を受けたい? それとも親を通じて聞く方がいい? 東京都杉並区立和田中学校の授業で、生徒が話し合った。自分たち中学生には、どこまで自分の生き方を決める権利と覚悟があるのか。議論は、子どもの自己決定権や親子の絆に及んだ。

 第一線で活躍する著名人を招く「よのなか科」の授業。3年生約100人が参加、6日に行われた。妻をがんで亡くしたジャーナリスト田原総一朗さんが進行役を務めた。

 まず代田昭久校長から、未成年に対するがん告知については統一見解がなく、医師や病院側の判断に委ねられていると紹介。議論に入った。

 「直接告知」が多数派だったが、「親を信じているから任せたい」「いきなり医師から聞かされたら絶望するかも」と言う生徒らも。「君たちはそんなに親を信頼しているのか」と田原さんがたきつけると、議論に火がついた。

 「親が判断して告知しないと決めたなら、親の愛だと思う」「親は我が子が悲しむ姿を見たくないから、うそを言うかもしれない。それは愛ではなくエゴ」「親は最後まで頼れる人。エゴなんて言う人は親の愛を分かっていない」

 議論は親からの自立と責任のあり方へと進んだ。

 「何歳で自立するんだ。自分の命に責任を持つのはいつからなんだい」と田原さん。「自分で稼いだお金で生活できるようになるのが自立だから、まだだと思う」「もう自立して責任を持てる年齢に達していると思う」。意見が割れる。

 議論の合間。23歳でがんを告知された経験を持つ阿南里恵(あなみ・りえ)さん(29)が、ゲストとしてマイクを握った。

 「5年生存率は50%」と言われて死を覚悟する一方で、落ち込む両親を励ましつづけた。そんな経験を紹介し、「中学生だけじゃない。大人だって受け入れられないんです」と説いた。

 授業の前半、「親の判断に委ねたい」と主張していた石黒翔太さん(15)は「阿南さんの話を聞いて、迷い始めた」。

 石黒さんが親に委ねたいと考えたのにはわけがある。石黒さんの母親は10年ほど前にがんを告知され、今は完治している。母親は告知を受け、ショックで泣いてしまったと聞いた。「強く見えるお母さんが泣くほどつらいなら、僕は耐えられないと思う。だから親から聞きたい」

 でも、阿南さんの言葉に、親は頼るだけではなく、支える相手でもあると気付いたという。「どっちがいいか分からないけど、自分のこととして考えなきゃと思った」

 約2時間に及んだ議論は田原さんの言葉で締めくくられた。「がん告知を考えるのは生き方を考えることにつながる。後悔しない人生を送るためにも、皆さんには人の役に立つ人間を目指してほしい」(岩波精)

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