両親が自分自身のことを最優先に考えると、ときにはわが子の存在が邪魔になってしまうこともあるのだろう。そうした要因が、出生率低下の一因になっているとも考えられる。
高齢化によって寿命が延びた影響も
シニア層が持つ“伊達直人”的な心理
しかし本来、多くの人々にとって、子どもは愛しく何物にも代えがたい存在であることに変わりはない。子育てが終了したシニア世代にとってもまた、子どもの可愛さは無類のものだ。
生物学的に見て、生物は種を維持するために子孫を残すことが最も重要な使命であり、それが終了すると「使命を終えた個体」という扱いになる。ところが今では、医学の発達によって人間の寿命が延び、物心共に豊かなシニア層が、自分たちの次の世代を大切に思う気持ちが強くなっていると考えられる。
それが、わが国の児童虐待などの痛ましいニュースを耳にして、「何かできることがあれば少しでも貢献したい」という意識を持つことは、自然の流れであろう。今回、“伊達直人”氏がそうした意識を表現するモデルを提示したことに触発され、それに賛同する人たちが多かったということなのかもしれない。
もちろん、そうした流れは一時的な現象で終わってしまうかもしれない。しかし、人々の潜在意識の中に「優しい気持ち」と、「次の世代を大切にする意識」があれば、何かをきっかけにして、再び次の“伊達直人”が出現することも考えられる。
もう1つ、忘れてはならないことがある。それは、われわれ日本人が持つ「幸福感」だ。わが国は中国に抜かれて、経済規模では世界第3位になったものの、世界的に見て経済的に恵まれた国であることは、間違いない。