誰の心にも優しい気持ちが潜んでいるもの
「タイガー運動」は子どもの重要性低下の兆候?
今回の一連の出来事については、色々な憶測が出ている。現在我々には、ことの真偽を判断するだけの材料がなく、何が真実なのかを見極めることは困難だ。ただし1つだけ、忘れてはならない点がある。
それは、誰にも「他を思いやる優しい気持ち」があることだ。ときには、そうした気持ちが心の奥底に潜み、本人にも認識できない状況になっていることもあるだろう。しかし、「恵まれない子どもを見て、できれば何とかしてあげたい」という意識は、誰もが持っているはずだ。
仮に、そういう気持ちで行動を起こした人が、最初のタイガーマスクであったとすれば、その人は何らかの理由で、自分のことが公になることを嫌った。だからこそ、「タイガーマスク=伊達直人」という、多くの人が知っている存在を借りたのである。
何故そうしたのかは、本人に聞いてみなければわからないが、たぶん自分がメディアなどで紹介されることを好まなかったか、あるいは「この程度のことで、実名で名乗り出るほどのことはない」と考えたのかもしれない。
そうした心理を類推した人々のなかで、何人かは以前から「最初の伊達直人氏のような行動を起こしたい」と思っていたのではないだろうか。つまり、意識の中に持っていた「優しい心を表現するモデル」を踏襲するきっかけを得て、それに触発された人たちが、実際にそのモデルを使って、今まで意識していたことを実行に移したとは考えられないだろうか。
最近、わが国では、児童や乳幼児を虐待するニュースが多い。なかには、親から厳しい折檻を受けたり、食事を与えられずに大切な命を落とすケースもあるという。その背景には、家庭のなかで、子どもの重要性が低下していることがあるのかもしれない。