こころを救う

文字サイズ変更

心身合併症、搬送・転院要請 都内の総合病院、患者3割入院できず

 ◇満床など理由--07年厚労省調査

 精神障害者が身体疾患にかかる心身合併症の受け入れ病院不足問題で、救急搬送や転院で精神科病床のある東京都内の総合病院へ入院要請した合併症患者の約3割が、要請された病院に入院できなかったことが、厚生労働省研究班の調査で分かった。うち約7割は「満床」が理由だった。総合病院は合併症治療の要として患者が集中しているだけに、専門家は「予想以上に深刻な状況だ。手術が必要な重い合併症ほど断られていた。一時的な処置だけ受け自宅に帰った患者も少なくないのでは」と指摘する。【堀智行】

 調査は順天堂大医学部付属練馬病院の八田耕太郎先任准教授の研究班が実施。07年4~5月の2カ月間、大学病院や都立病院を含む精神科病床を持つ都内の全総合病院を対象に調査を依頼し、75%にあたる21病院から回答を得た。救急搬送のほか、一般病院や精神科病院から転院してきた合併症患者数をまとめた。

 調査結果によると、入院治療が必要として受け入れ要請があった合併症患者は262人で、うち88人が要請した病院に入院できなかった。

 理由は▽満床で対応できない=68%▽(隔離する個室がない)開放病棟のため管理が困難=7%▽当該身体疾患の専門医がいない=5%--だった。

 88人のうち31人は自殺を図った後に搬送された患者だった。症状別では大腸がんなど手術を要する重い症状が多かった。

 その後、他の病院で治療を受けられたかどうかは不明。

 一方、要請した病院に入院できた174人について、依頼時の重症度と入院までにかかった日数を調べたところ、即日入院が必要な緊急性の高い患者88人のうち約3割の30人はその日のうちに受け入れられず、入院待ちとなっていた。また2日以内での入院を要する66人のうち約2割の14人が入院までに3日以上かかっていた。

 八田先任准教授は「自殺未遂のように精神症状が重かったり、手術が必要な患者ほど断られていた。即日の入院希望も時間がかかっており、十分対応できていない。総合病院の精神科病床をこれ以上減らさないことに加え、一般病院でも合併症治療ができるよう常勤の精神科医の配置を促す手立てが必要だ」と指摘している。

==============

 情報やご意見をメール(t.shakaibu@mainichi.co.jp)、ファクス(03・3212・0635)、手紙(〒100-8051毎日新聞社会部「こころを救う」係)でお寄せください。

毎日新聞 2011年1月18日 東京朝刊

PR情報

こころを救う アーカイブ一覧

 

おすすめ情報

注目ブランド