プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術:記憶に焼きつくメッセージはここが違う! コンセプトに磨きをかける6つの方法
プレゼンの伝えたいことは同じでも、伝え方次第で聞き手の印象や記憶への定着度は異なります。ではどうやって伝え方をブラッシュアップさせるのでしょうか。
同じメッセージのプレゼンであっても、伝え方次第で聞き手の印象や記憶への定着度合いは異なります。『アイデアのちから』の著者であるハース兄弟は、記憶に焼きつくメッセージの特徴を、それぞれの6つの要素の頭文字をとって「SUCCESs」と表現しています。
「SUCCESsの法則」にかなったメッセージは、多くの人の気持ちを動かしたり、記憶に深く刻まれると言います。それは次のようなものです。
- 単純明快である(Simple)
- 意外性がある(Unexpected)
- 具体的である(Concrete)
- 信頼性がある(Credible)
- 感情に訴える(Emotional)
- 物語性(Story)
この6つのポイントを使ってメッセージの改善前と改善後を比べてみると、よりイメージがつかめると思います。
1:単純明快で、誰でも覚えられるようにする
とにかく、細かいことは置いておき、シンプルにすることです。複雑なことは記憶にとどめられません。例えばユニクロ、ヒートテックのキャッチコピーの場合はどうでしょう。
- 改善前:体の水蒸気を吸着して発熱する繊維と、何重もの空気の層で熱を逃さない
- 改善後:自動的にずっと暖かい
2:意外性があり、記憶に深く刻まれるようにする
予定調和的なものは退屈です。エンディングが読めるドラマは眠くなります。考えもしなかった組み合わせに人々は驚き、記憶に刻まれます。こちらは「もしドラ」のタイトルを見てましょう。
- 改善前:あらゆる組織において経営学者ドラッカーのマネジメント手法が有効
- 改善後:もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
3:具体的にデータや事実、実現手段などを示す
総論でも、各論がないと具体的なイメージがわきません。数値で示すると根拠はさておき、説得力が増します。ここでは、ちょっと難しいイメージのある「低体温と代謝の関係」を説明する場合を例にします。
- 改善前:低体温が続くと新陳代謝が悪くなるため、体温を上げることが重要
- 改善後:体温が1度下がると免疫力は30%低下する
4:信頼性を確保する実績や第三者の推薦、ケーススタディを示す
3と同様に具体性が信頼を増すということなんですが、自分と似たタイプ、類似企業などの物語をイメージさせることで、リアリティが増します。昨年話題になった企業の英語公用語にもつながる「ビジネスにおける英語の必要性」を説く場合はこんな感じです。
- 改善前:海外市場へ依存していく今後の製造業において英語力は必須
- 改善後:圧倒的な強さを誇る韓国サムソンは新卒採用の条件がTEIC900点
5:最後の一押しは、論理性より個人感情が支配する
プレゼン最大の課題は、論理だけでは納得させることのできない個人的な感情を引き付けること。なるべく身近で、実感できる内容が望ましいでしょう。例えば、アフリカ水問題に救済金を募る場合です。
- 改善前:ナイル川の水が干上がった310万平方キロもの土地にアフリカ最貧国6カ国
- 改善後:スーダンのエバちゃん(10歳)は毎日20キロ離れたところに水をくみにいく
6:断片情報の集まりでなく、ストーリーをつむぐ
人の記憶は複数の情報が関連し、1つのストーリーとして成立すると、長期の記憶に残りやすくなります。記憶の得意な人は、こじつけであっても、自分なりにストーリー化します。サウスウエスト航空の創業を説明する場合を考えてみましょう。
- 改善前:2人の創業者が出会い、主要都市間を直接結ぶ近距離航空会社を思いついた
- 改善後:2人の創業者はナプキンの裏に3つの丸と都市名、それを結ぶ線を描き、近距離航空会社のビジョンを思いついた
いかがだったでしょうか。もちろんプレゼンのストーリーに、この6つすべてがそろっている必要はありません。しかし、これらの要素に着目して、提案をまとめ、フックやつかみの部分で興味関心を引くことができれば、あなたのメッセージはさらに磨かれ、洗練の度を増していくことでしょう。
筆者 構想をシナリオにするときに、上記のようなポイントに照らし合わせ、ちょっとしたトピックを入れるように心がけています。聞き手にリアルなイメージがわけば、しめたものです。ビジネスプレゼンでは、驚きや意外性は不要と考えるかもしれませんが、聞き手が認識していないだけで、やはり最終ジャッジは個人の感覚に左右させるわけですから、ぜひ、メッセージの磨きに「SUCCESsの法則」を活用してはどうでしょうか?
集中連載『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』について
パワポの前に「図」で考える――。ベストセラー『頭がよくなる「図解思考」の技術』の第2弾となる本書は、プレゼンテーションの根幹とも言える「メッセージをどう作り、どのように伝えるのか」を図で整理する方法を解説しています。
「見栄えのいいスライドを作ること」や「説得力のある話し方をすること」も当然大事ですが、プレゼンの目的(メッセージ)そのものが洗練されていなくては、聞き手の心には届かないからです。営業プレゼンテーションや講演に限らず、ちょっとした説明や商談、または報告などにも応用可能で、あらゆるビジネスシーンで活躍するはずです。
目次
- 第1章:残念なプレゼンは、なぜ眠たくなるのか?…面白いプレゼンの秘密とは?
- 第2章:考えがスッキリまとまる図解プロットの技術…自分の考えを整理する方法
- 第3章:「合体ロボ作戦」でシナリオに磨きをかける…プレゼンの流れを作り出す
- 第4章:魅力的なスライドラフを描いてみる…ハイクオリティなラフ描きの技術を公開
- 第5章:図解プロットに挑戦!…実際に、考えをまとめ、シナリオを作り、ラフを描く
- 第6章:魅力的なアイデアを作り出す10のテクニック…使えるアイデア発想法
著者紹介 永田豊志(ながた・とよし)
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。その後、デジタル業界に興味を持ち、デスクトップパブリッシングやコンピュータグラフィックスの専門誌創刊や、CGキャラクターの版権管理ビジネスなどを構築。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』(中経出版刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
Twitterアカウント:@nagatameister
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