実践的オブジェクト指向分析入門7
2つめの理由は、移行コストを抑えるシステムを企画するためです。私は20代前半の頃、移行コストを考えずに、ビジネス特許を狙える、画期的な基幹系業務システムを提案してしまった事があります。そのシステムを導入すれば、コスト削減はもちろんの事、新しい販売形態を狙える、実に画期的なものでした。ビジネスパートナーの開発サイドの評判は良く、発注会社の経営者の評判も良かったのですが、現場の人々から猛反発を受けてしまいました。その理由は、移行コストが高すぎる事です。私が提案した新規システムは、既存の業務システムとは発想が根本的に違い、現場の人間がついてこられない駄目なシステムでした。そのシステムは、結局お蔵入りとなり、既存業務システムを考慮したシステムを、改めて企画する羽目になってしまいました。
システムを開発する人間は、自分が持つ全ての情報処理技術の知識と技術を駆使し、自分が最高品質だと思うものを企画しがちです。しかしながら、移行コストが高すぎるシステムは導入出来ません。既存業務システムから乖離しすぎない、現在の状況を考慮したシステムを提案する必要があります。開発者が考える最高のシステムと、現場の人間が考える最高のシステムは違います。エンドユーザーの過去の資産を活かし、移行コストが低く、それでいて既存の問題を解決するシステムを構築するために、既存業務システムを熟知する必要があります。続く...