防衛省が、陸上自衛隊の普通科(歩兵)連隊の一部を、米海兵隊をモデルとする「水陸両用部隊」に改編する検討を進めていることがわかった。中国の急速な軍事力近代化などを背景に、九州や南西諸島の離島防衛を強化する狙い。年末に策定される新たな防衛計画の大綱でも、離島防衛強化を打ち出す方針だ。
九州・南西諸島の離島は自衛隊配備の空白地帯になっている。陸自西部方面隊(総監部・熊本市)が管轄する長崎・対馬から沖縄・与那国島まで南北1200キロ、東西900キロの区域には、約2500の離島がある。このうち陸自部隊が常駐しているのは沖縄本島(第15旅団)と対馬(対馬警備隊)だけ。残りは離島防衛を専門的に担う西部方面普通科連隊(西普連、長崎県佐世保市)がカバーしている。
対馬と与那国島の直線距離は青森県と熊本県の距離に相当する。西部方面隊に勤務経験がある陸自幹部は「これだけ広い管内を西普連だけでカバーするのは、現実には厳しい」と語る。
陸自が「水陸両用部隊」への改編を検討しているのは、九州南部を担当する第8師団(熊本市)の一部や、第15旅団の中の普通科連隊。陸上での有事対応や災害派遣といった通常任務に加え、占拠された離島に海から近づいて上陸・奪回したり、後続部隊のための陣地を確保したりする機能をもたせる考えだ。
モデルは米海兵隊。陸自は2006年1月から、米カリフォルニア州の演習場に、西普連や第8師団、現在の第15旅団などから部隊を派遣。ゴムボートを使って海岸に上陸したり銃を背負って泳いだりといった離島防衛を想定した共同訓練を、米海兵隊と続けてきた。