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[国際]ニュース
【from Editor】北の隣人の素顔に迫る
2011.1.18 07:55
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モスクワのボリショイ・バレエが「鉄のカーテン」の向こうからロンドンにやってきたのは、東西冷戦期の1956年だった。それまでソ連のバレエは映像で断片的にしか西側に知られていなかった。当時、ソ連最高の名手といわれたプリマ・バレリーナのガリーナ・ウラノワ(1910~98年)らが登場した舞台に接したロンドンの観衆は、その水準の高さに驚愕(きょうがく)したと伝えられている。
自由のない共産主義国家、ソ連の芸術・文化政策など、所詮は国威発揚のための作り物-とさしたる関心を持たずにいたのだが、十数年前に突然、バレエ鑑賞に目覚め、ウラノワの公演の古い映像を見て、遅まきながらロンドンの観衆と同じようにのけぞった。ウラノワらの優美な身のこなしは、プロパガンダで創り出せる代物ではないと直感した。
ロシア革命で倒されたロマノフ王朝が育てたクラシック・バレエという貴族趣味の芸術が、なぜ共産主義体制で継承され、さらに発展したのか。そういえば、音楽の世界でもソ連は素晴らしい演奏家を輩出している。
スターリン独裁下での大粛清や秘密警察による抑圧という歴史の中で、ロシア人はどうして、このような芸術を生み出すことができたのだろう。興味は尽きない。
モスクワを1度だけ訪れたことがある。1991年12月末にソ連が正式に解体された直後の92年1月だった。仕事の合間に、購買所をのぞくと、食料品はほとんどなく、有名なメロディア・レコード本店では、棚は空なのに店員がひまそうに突っ立っていた。かとおもえば、市内には外車の新車展示場が出現し、美しいコンパニオンたちがほほえんでいた。
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