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きょうの社説 2011年1月18日
◎兼六園の欧州客増加 一人旅のもてなしに工夫を
兼六園を昨年訪れたフランスやスペインなどの欧州主要6カ国からの観光客が1万63
85人と過去最多を記録した。景気低迷や円高の影響が懸念されて石川県内を訪れた外国人の全体数が伸び悩んだなかで、景気に左右されにくい堅調な欧州客は今後一層の増加が期待される。欧州客の兼六園人気の背景には「三つ星」に格付けされた「ミシュラン」効果に加えて 、日本の歴史や文化などへの関心の高さがある。団体旅行中心の東アジアの観光客に比べて、欧州客は個人旅行が多く、誘客促進に向けて「一人旅」でも兼六園などの金沢、石川の魅力を安心して楽しめるように、観光ガイドの養成、英文パンフレットの作成をはじめ、「もてなし」に工夫を重ねてもらいたい。 昨年は欧州主要6カ国の国別でもロシア以外の5カ国で過去最多を記録した。フランス 4675人(2009年比15・3%増)、スペイン4168人(同14・8%増)で、イタリア、英国、ドイツと続き、兼六園人気の定着ぶりがうかがわれる。 近年の欧州客増加に対して、県内自治体や観光関係の各種団体も受け入れ態勢の整備を 進めている。これまでは外国語の案内や表示が十分でなく、個人で散策する上で不便さを感じているとの声があったが、昨年は県が金沢城公園・兼六園の外国語ボランティアガイドの養成に乗り出し、県喫茶飲食生活衛生同業組合がアジア版に続いて、英語やフランス語などの欧州版の接客表現集を製作するなどした。今後も観光ガイドの養成や多言語パンフレットの作成など、接客の現場できめ細かい環境整備を積極的に進めてもらいたい。その際、外国人の視点から見た改善点を忘れずに、「もてなし」力の向上を図ってほしい。 欧州の旅行者が訪日する主な動機は「伝統文化、歴史的施設」「日本人とその生活」に 触れることなどで、金沢、石川には兼六園や金沢城、伝統工芸などの観光資源が多くそろっている。金沢市は3月にフランス最大規模の旅行博覧会に出展するが、海外への情報発信にあたって、関係機関は「ミシュラン効果」を途切れさせない効果的な誘客策を展開する必要がある。
◎早すぎる就活 経団連の新方針も不十分
経団連が企業による採用広報活動の開始時期を、大学3年生の12月1日以降とする新
方針を決めたのは、学生の就職活動(就活)の早期化や長期化の流れを止める最初の一歩と位置付けられる。私たちがこれまで指摘してきた通り、大学3年生が早い時期から就活に追われる現状では、学業がおろそかになり、学生の能力・資質を高める貴重な学びの時間を奪ってしまう。ただ、3年生の10月ごろから始まる会社説明会を2カ月遅らせる程度では物足りない 。商社の業界団体である日本貿易会は、会社説明会を3年生の2−3月、選考試験を4年生の8月とする案を提案していた。就活を春休みと夏休み時期に集中させる案は、学業に及ぼす影響が少なく、一考に値する。せめて3年生の間は学業に専念できる環境が必要ではないか。 就活の早期化や長期化の流れは、大学での専門教育の大きな支障になっている。3年に 進学した学生が専門教育を3カ月学んだ程度で、夏休みを迎え、休み明け早々に就活に走り回るようでは、学業に身が入らなくなるのは当たり前だ。大学全体の学力の低下、企業にとっては人材の質が低下する要因になり、大学、学生、企業の三者が損をする。 経団連は、3年生の12月以前に、会社説明会の参加登録を受け付ける、といった囲い 込みの活動を自粛する。だが、強制力がないため「効果は限定的」との声もある。抜け駆けが横行し、新方針が有名無実化しないようルール順守に努めてほしい。 会社説明会を2カ月遅らせる一方で、面接や試験など実際の内定につながる選考活動の 開始時期については、これまで通り「4年生の4月以降」のままである。米倉弘昌会長は「中小企業を含め業界や企業規模によって採用事情が異なり、多くの企業に開始日を順守させるのは難しい」と説明した。 しかし、会社説明会を遅らせるだけでは、就活の早期化や長期化の問題は解消できない 。第2弾のルール改正に向けて、今後は選考活動を遅らせるための合意形成が必要になってくる。
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