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なぜ横並びで展示されるAndroidタブレットを作ってもだめなのか

先日のエントリー「Androidタブレットはヨドバシカメラの『Androidタブレットコーナー』に横並びにされた時点で負けだ」には、例によって賛否両論のさまざまなフィードバックがよせられたが、否定的な意見の大部分は以下のようなもの。

  • PCメーカーが「何のためにWintel」と考えてるとは思えないし、スマホやタブレットで「何のためのAndroid」って問いに意味があるとも思わない。
  • すでにそんな現状の Windows PC でも一定の利益は出ているのだから、Android タブレットも負けではあるまい。
  • 歴史に学ぶとするなら、iPhone/iPad が Machintosh だとすれば、Android機はPC/AT互換機なんだと思う。ただ、「Windowsなのでどれも使い勝手は同じです」 の中であっても、DELL のように成功した会社もあるわけで。
  • そうかな?それを嫌ってガラパゴス機能を載せて付加価値をつけようとして開発スケジュールの遅延、アップデートコストの増大を招くぐらいなら、バニラのまま大量生産・低コスト・高品質化を狙ったほうがいいかもよ?
  • なんだかなぁ。パソコン見てApple社は機種がMacProとかしかなくて、Windowsは「WindowsなのでOSは同じです」って言ってるのと何か違うの?
  • VAIOやDynabookがノートパソコンコーナーにあるのを見て、それらがが負けているとは思いません。

つまり、「今のiPhone vs. Androidという構図は、90年代前半の Macintosh vs. Windowsの構図と同じ。iOSを他社にライセンスしないというAppleの戦略は間違いで、最終的にはAndroidが勝つ」という意見だ。

実際のところ、Androidをサポートすることを決めたメーカーはたくさんあるし、Android携帯の出荷数もトータルではiPhoneを凌駕しつつある。単に「数が多い=勝ち」という意味で言えば、Androidは「勝ちつつある」のかも知れない。その意味では、十把一絡げにされてもかまわないから、とにかくAndroid携帯・Androidタブレットを出しておくというのもある意味では「正しい」戦略なのかも知れない。

しかし、どのメーカーも営利企業として存在するのだから、単に数や売り上げを追い求めるのではなく、最終的には株主価値を高める「利益」をあげなければならない、「利益をあげつづけることのできるビジネス」を作り出さなければならない。

そこで、将来のタブレット市場を占う意味でも、「Windowsが勝った」パソコンビジネスにおいて、どの企業が「利益をあげるビジネス」を作る事ができたか、を見てみよう。

Chart-of-the-day-revenue-vs-operating-profit-share-of-top-pc-vendors
これは Business Insider の去年の記事(参照)から引用したもの。世界のPCメーカートップ10社の2009年の売り上げと利益のシェアをグラフにしたものだ。

売り上(青いバー)げだけを見ると、トップのHPが17%、二位のDellが13%。Appleはわずか7%のシェアにとどまっている。これだけを見ても「寡占化」が進んでいることが良く分かると思うが、もっと興味深いのは利益の方だ(赤いバー)。

売り上げでわずか7%のシェアしか持たないAppleが、トップ10社の生み出す利益の合計の35%を持って行ってしまっているのだ。

つまり、90年代のMacintosh対Windowsの戦いではWindows陣営の圧勝ではあったが、そこで「利益の生み出せるビジネス」を作ることが出来たのはDellやHPなどのごく一部のメーカーだけ、現時点で、パソコン・ビジネスからもっとも大きな利益を出し続けているのは、負けたはずのApple、という皮肉な状況になっている。

もちろん、Appleは一度は倒産寸前まで追い込まれたし、iPod/iPhoneの成功により奇跡的によみがえったからこそ今のMacビジネスがあるとも言えるのだが、それにしてもこの状況は驚異的。付加価値の高い「尖った」商品作りの重要さを良く表している。

今もヨドバシカメラに行くと、「各社Windowsパソコン」が横並びに展示されているが、実はHP/Dell/Acer以外のメーカーはほとんど利益をあげていられないというのが実情だ。

ちなみに、携帯電話市場に関してもすでに同じようなデータが出ているのでここに貼付けておく。

Ebit-mobile-market

これはGigaomの"theAppleBlog"からの引用だが(参照)、パソコン市場と同じ様に、台数だけを見る(このグラフには出ていない)とNokia+Samsung+Motorola+ソニエリの上位4社が大半のシェアを持っているが、利益の方(上のグラフの右側)を見ると、台数ベースでは数%以下(スマートフォンだけでなく、すべての携帯電話を含むとこうなる)のAppleが48%ものシェアを持っているという状況になっている。

ここまで具体的な数字を示せば伝わるとは思うが、今のままの状況(=Apple以外のメーカーがレミングスのように足並みを揃えて似たようなAndroidタブレットを作っている状況)でタブレット市場が立ち上がると、Androidタブレットは数ではiPadに「勝つ」だろうけれど、最終的にはパソコン市場や携帯市場と同じような状況(3〜4社による寡占状態、ただし大半の利益はAppleへ)になるのは明白だ。

逃げ切りメンタリティ」に犯された日本のメーカーの経営陣にとっては、余計な冒険などせずに足並みをそろえて「横並びAndroidタブレット」を出す方が無難で分かりやすい(つまり「稟議が通りやすい」)戦略なのだろうが、それでは通用しないことはすでに歴史が証明している。

ヨドバシカメラに横並びに展示される十把一絡げの「Androidタブレット」を作るのではなく、ターゲットユーザーを絞った付加価値の高いもの作りで「利益の生み出せるビジネス」を作ることを本気で目指すべきだと思うのだがいかがだろうか。

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