その瞳が、己を屠るであろう剣筋を捉え続けた。流れを軌道を剣先を、決して見逃さぬ様に。
見落としは許されず、そうしたならば。己の死が待ち受ける。
息を吸い、息を吐き、酸素が脳に行きわたる。
僅かに身構え。
迫る銀刃に臆すことは無く。単なる武器と認識し、僅かに身体を弛緩させた。
軽やかな挙動で身を反らし、風の悲鳴と共に振り降ろさ殺意が眼前を掠めゆく。
逃げ遅れた髪は宙を舞い、どこぞの空へと消えていき。
銃士は見た。
闘志に満ち溢れ、殺意の滴る杯を、つまりは己をが殺すであろう戦士を
私はこれを飲み下し、先に進むのだ。今も、そしてこれからも。
私が殺される理由も、彼を殺す理由も在るのだから。
右腰に着けられた銃を意識の中に置き。
瞼を瞬く暇もなく、静かに。表情一つ変えずに銃を抜き、一粒ほどの躊躇もなく。親しみを込めて、撃つ。
一発は頭部に
一発は心臓に
双発の銃弾が剣士と突き進む、彼を倒すために。主に与えられた命を果たすために。
だが、彼は逃げない、避けようともしない。
銃士からは単なる間抜けの様に見えた。
銃が剣に勝つ訳がないのだから、負ける理由などないのだから
確信する。己の勝利を、彼の死を。
光が閃き、異様な残響音が鼓膜を震わせた
生きている、彼は、そこに。
馬鹿な。
驚愕と共に銃士は後方へと跳躍し、距離をとる、銃の間合いへと。
「……………良い」
暗い声、高いとも低いと言えず響き、声から察すれば女のそれと解る。
感嘆あるいは歓喜か。
銃士の口から漏れたのはそんな感想だった。