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[25449] 銃士と剣士
Name: TORUS◆324c5c3d ID:95e64f2b
Date: 2011/01/15 22:36
 その瞳が、己を屠るであろう剣筋を捉え続けた。流れを軌道を剣先を、決して見逃さぬ様に。
 見落としは許されず、そうしたならば。己の死が待ち受ける。
 息を吸い、息を吐き、酸素が脳に行きわたる。
 僅かに身構え。
 迫る銀刃に臆すことは無く。単なる武器と認識し、僅かに身体を弛緩させた。
 軽やかな挙動で身を反らし、風の悲鳴と共に振り降ろさ殺意が眼前を掠めゆく。
 逃げ遅れた髪は宙を舞い、どこぞの空へと消えていき。
 銃士は見た。
 闘志に満ち溢れ、殺意の滴る杯を、つまりは己をが殺すであろう戦士を
 私はこれを飲み下し、先に進むのだ。今も、そしてこれからも。
 私が殺される理由も、彼を殺す理由も在るのだから。
 右腰に着けられた銃を意識の中に置き。
 瞼を瞬く暇もなく、静かに。表情一つ変えずに銃を抜き、一粒ほどの躊躇もなく。親しみを込めて、撃つ。
 
 一発は頭部に
 一発は心臓に

 双発の銃弾が剣士と突き進む、彼を倒すために。主に与えられた命を果たすために。
 
 だが、彼は逃げない、避けようともしない。
 銃士からは単なる間抜けの様に見えた。
 銃が剣に勝つ訳がないのだから、負ける理由などないのだから
 
 確信する。己の勝利を、彼の死を。
 
 光が閃き、異様な残響音が鼓膜を震わせた
 生きている、彼は、そこに。
 馬鹿な。
 
 驚愕と共に銃士は後方へと跳躍し、距離をとる、銃の間合いへと。
 
「……………良い」
 
 暗い声、高いとも低いと言えず響き、声から察すれば女のそれと解る。
 感嘆あるいは歓喜か。
 銃士の口から漏れたのはそんな感想だった。


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