「どこに相談したらいいか分からない」−。違法薬物の使用者や周りの人たちは孤立しがちだ。そんな中、依存症回復者らが匿名の質問に答えるインターネットの相談サイトや、そこでの質疑をまとめた本が、さまざまな立場の人に解決への道筋を示している。
NPO法人ASKが編集した本を手に、相談サイトの取り組みを「意義深い」と話す倉田さん |
依存性薬物の問題に取り組むNPO法人「ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)」(東京都)は2002年、予防教育の一環で子どもたちからの質問を受け付けようと、依存症回復者らが回答するインターネットサイト「アスクキッズ」を開設した。
「シンナーが止まらない!」「彼氏が大麻を使っている!」。翌年には大人からの深刻な相談が相次ぐようになり、相談機関が十分に機能していない実態が浮き彫りになった。
これまでの相談者の年齢は小学5年から62歳までと幅広く、回答件数は約350件に上る。内容はホームページにも掲載。体験に基づいた具体的な対応方法を生々しく伝え、現在も相談を受け付けている。
回答者の1人で、大阪の回復支援施設「大阪ダルク」や同「フリーダム」の運営などに取り組む倉田めばさん(56)は、中高生の使用者やその友達など「さまざまな立場の人が相談したくてもできないことをあらためて知った」と、サイトの取り組みを評価。半面、「厳罰主義を変えない限り、匿名でないと相談もできない」と現行制度に批判的だ。
違法薬物(有機溶剤を除く)を使った経験がある人は、国内の15−64歳の1・7%(2009年)。身近にいる可能性は高いが、薬物乱用防止の標語「ダメ。ゼッタイ。」に代表される予防中心の施策や犯罪行為という“かせ”によって、使用者らは周りに相談しにくい現状がある。
薬物依存症になれば意志ではコントロールできない。適切な機関に助けを求めなければ、周囲の人を巻き込みながら問題はさらに深刻化する。
同法人は、相談メール96件の質疑内容を、薬物の種類や相談者の立場などに応じて分類した本『誰にも聞けなかったドラッグの話』(168ページ、1470円)を昨年12月に出版した。
同書では、相談の取っ掛かりは全国各地にある精神保健福祉センターや回復支援施設「ダルク」などに連絡するよう提案。使用者がやめ続けるために、解毒のための治療や同じ体験をした人たちの集まりに参加する有効性を示し、周りがやめさせたいときは、本人が引き起こす問題を肩代わりしない手法も示す。
体験者ならではの回答は厳しくも温かく、薬物使用で「かっこよく『痩せられる』というより、骸骨のようになれますよ」(倉田さん)などとユーモアを交えたケースも。
同法人の今成知美代表は「多くの人に読んでもらい、予防や早期発見、再発予防に役立ててほしい」と呼び掛ける。問い合わせは電話03(3249)2551、同法人へ。
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