23日、農山村再生に関する勉強会に参加しました。
中山間地(田舎)の問題を考えるとき、「見捨てられ感」行き場のない悲憤、不安感、不信感、なげやり、諦めといった悲観的な言葉があります。
広島県の基幹的農業従事者(65歳以上)は、73.2%。
全国平均は57.4%です。
広島県の農家の農業所得(1戸あたり)26万円。
全国平均が120万円なのに対してたったの26万円。
全国の月平均10万円ではなく2万余りの収入では、若い人々は生きていけません。
広島県で農業は、年金を受け取れる高齢者が細々と行なっているのが実態です。
では、豊かで幸せな地域(例として都市部)とは、どんな場所なのでしょうか?
私は、人・モノ・金・情報が行き交うところだと思います。
なぜ、中山間地では、人・モノ・金・情報が自由に行き来しないのでしょうか?
閉鎖的で、外から人々が来ることを望まない地域が多くはないでしょうか?
農業は、参入障壁が高い業種です。 農地法などにより土地を自由に取得できない。
機械を使って農業を行なえば、初期投資がかかるため、儲からないなどです。
機械に関しては、共同で使い回しをするなど、工夫・改善の余地はありそうだと私は感じます。
中山間地を取り巻く法規制など外的要因を変えるためには、人々の心がまず変らなければ難しいと思います。
私はフランスの田舎(プロバンス地方)で暮らした経験があります。
私にとっては、大都会パリよりもエクサンプロバンスでの暮らしの方が面白く、毎日が発見の連続でした。
南フランスのエクサンプロバンスという中山間地は、世界中のプチ・ブルジョワ(小金持ち)が集まる刺激的な観光地です。
エクサンプロバンスがなぜ、人々を魅了するのか?
とにかく、楽しい場所だからです。
住んで良し、食べて良し、面白い人と出会える場所だから、評判が評判を呼び、世界中から人が集まるようになったのです。
人々の心が世界に開かれているから、田舎が豊かな観光地になれたのではないでしょうか?
広島の中山間地の人々は、農地を他人には譲りたくない、或いは見知らぬ人々が地域に移り住んで来ることを好ましいとは(本音では)思わないなど、閉鎖的なところはないでしょうか?
よそ者が地域に入って来るのは、嫌だけどお金だけは欲しいというのは、虫が良すぎはしないでしょうか?
中山間地が年寄りばかりになって、若者が居つかないのは、年寄りが生きてきたルールに縛られて息のつまるような暮らしはしたくない、男女平等の現代で、時代錯誤の男尊女卑のルールで生活したいと思う女性がどれだけいるでしょうか?
若い女性が行きたがらない田舎は、魅力がない地域になってしまいます。
エクサンプロバンスは、オシャレな田舎町です。
生活スタイルのすべてが、センス溢れてカッコいい暮らしなのです。
プロバンススタイルの食事は、健康的で美味しい!
生活に必要な雑貨品など、プロバンス柄(オリーブやひまわりなど地域に根ざした独自のデザイン)であったり、手作りの見たことのないようなモノが町中にあるのです。
最近、女性に人気のあるロキシタンも、この地方では当り前のハーブを使ったシャンプーや基礎化粧品です。
ロキシタンは、日本で言う、農商工連携の典型的な成功例です。
プロバンスの田舎では、郊外で採れるハーブを原材料にした石鹸は市場で毎日、販売されています。
農家の人々が手作りで作った石鹸、ラベンダー、海草(痩せると言われている)或いはフルーツ(イチゴ、オレンジなど)は、珍しくて市場で見つけてきては、日々、使っていました。
メーカーで大量生産してスーパーで売っている石鹸は、使いたくなくなるほど品質の良いものが市場で普通に売られています。
エクサンプロバンスで暮らしているとき、買物は毎朝(午前7時から12時まで)、市場でしていました。
サラダ用の野菜(葉っぱ)の種類がこんなにたくさんあるのか!と驚きました。
日本(アメリカ)で見たこともない野菜もたくさんあります。
日本でサラダといえば、レタスが定番で水菜・ほうれん草・キャベツ程度です。
ところが、南仏では、サラダ用の新鮮な野菜は豊富で年中、たくさん売られています。
サラダが大好きな若い女性が好む野菜をなぜ、もっと作らないのか?
私は不思議でたまりません。
女性が喜んで買いたくなる品揃えがされている農業になっているでしょうか?
農業に関して、マーケティングはほとんど行なわれていません。
ただ、昔ながらのモノを作っているだけで、消費者とのコミュニケーションもおざなりにされていないでしょうか?
お米、ひとつとってみても、商材のPRやマーケティングが足りないと私は思います。
米のような定番商品は、単に売っているだけなら、必ず売上は落ちてきます。
定番商品は、ロングセラーとして売り続ける努力が常に必要とされます。
例えば、コーラのような定番商品は、常に宣伝に力を入れ、コマーシャルやイベントなどを通して、カッコいいライフ・スタイルを若者にアピールしなければ、すぐに売れなくなります。
言い換えれば、お米の売上が落ちているのはマーケティング(創意工夫)が何もないからです。
フランスのワインは、ソムリエがいてこの料理には、この銘柄が合うと飲み方を教えてくれます。
ところが、日本人の精神とまで言われているお米に関してはどうでしょうか?
お米の銘柄に合わせた美味しい炊き方、食べ方など私達はどれほど知っているでしょうか?
普通の食品であれば、パッケージに調理例など写真入りレシピが載っています。
ところが、お米に関しては、ほとんど情報発信はされていません。
ある日、とても美味しいご飯を食べました。
あまりにおいしいので、なんでこんなに美味しいのか?聞きました。
すると、利尻こんぶを入れてお米を炊くと、旨みが出て、ごはんが美味しくなるのだと教えてもらいました。
以来、私は電器炊飯器の中に昆布を入れ、ごはんを炊いています。
そんなチョットした美味しいごはんの炊き方のコツさえ、知らずに何十年もごはんを食べていたとは!
漢方米など山形ガールズ農場では作っていますが、ハーブや漢方でお米をおいしく炊くには?などアイディアを伝える「お米のソムリエ」がいてもいいと私は思います。
お正月に飲むお屠蘇など、漢方の紙パックを入れて、熱燗すると日本酒が別な味になります。
お米にも、一緒に炊くと美味しくなるハーブや漢方紙パックとか売り出し、新しいご飯のレシピの提案があってもいいと思います。
広島県で「お米のソムリエ・コンテスト」など開催して、美味しい炊き方、食べ方のレシピを集めてはどうでしょうか?
業界でPRやマーケティングを行なう発想が、なんで、こんなにないのか?と私は思います。
どんな商品でも、定番商品だけだと売上は落ちてくるので、必ず、季節商品やプロモーション商品を導入し、定番商品の売上を引っ張ったり、プロダクト・サイクル(商品の寿命)を延命させる手法を取ります。
日本の田舎でアジアの人々が食べたこともないような、美味しいお米があれば、それだけで人は来てくれると思います。
フランスの田舎では、ワイン祭りがある頃は、世界から観光客がたくさん集まります。
ところが、お米祭り、ごはん祭りがなぜ、広島にはないのでしょうか?
ごはんはただ、水と炊くだけだと思い込んではいませんか?
こんなにごはんが大好きな国民なのに、美味しいごはんの炊き方を教えてくれるお祭りもないなんて!
若い人々の発想で、新しいごはん(お宅ごはん)のレシピのコンテストがあってもいいと思います。
米をただ作っていれば、売れるのではなく、食べ方、炊き方をお米のレシピなどライフスタイルを売る農業にならなくてはならないと私は考えます。
プロバンスの農業が成功しているのは、ライフ・スタイルを売っているからです。
世界中の女性を魅了するオシャレな演出が田舎にあるから、人々が興味を持って集まってくるのです。
広島の中山間地、寂れて人が居なくなって、廃れてしまうのは、心が外に開かれていないからではないでしょうか?
年寄りだけで、ヒッソリと枯れていく地域でいいのか?
農地所有の個人の権利を規制緩和し、外から人々がドンドン入ってくるような生き方を選ぶのか?
地域の人々が決めることだと私は思います。
豊かさを追求しようと思うのであれば、ある程度、外に開かれた社会にならなくては、人・モノ・情報・金は自由に行き来しないと思います。
中山間地が「女性天国」になったら、若い女性が田舎に魅力を感じ、集まると思います。
田舎に可愛くて素敵な女性がたくさん居たら、男性も集まってきます。
中山間地に女性中心のお祭りがなぜ、ないのでしょう?
フランスの田舎のお祭りでは、女性が民族衣装を着飾って、パレードをしたり、街角で観光客と写真を気軽に一緒に撮ってくれたりします。
女性がいなければ、お祭りの期間だけ、やってくる女性を募集すればいいと思います。
村のキャンペーン・ガール・グループとして、AKBなんとかというアイドルのように女性集団を公募して、村祭りの主役にしてしまうとか、お金をかけなくても、「お宅」の男性を集める仕掛けは、普通の田舎でもできると思います。
ちなみに、コンビニなど若くて可愛い女の子をバイト店員として雇うと、即、その時間帯の売上が上がるというのは、よく知られています。
南仏のプロバンスに美しいオシャレな女性が多いから、素敵なプチ・ブルジョワの男性も世界中からやってくるのだと私は感じました。
日本の田舎は、見捨てられているとは私は思いません。
ただ、外に向かってあまりにも開かれていないと思います。
地域の豊かさは、人々がオープン・マインドになり、心の鍵を開いたとき生まれるのではないでしょうか?
参考:「農山村再生」小田切徳美 著
岩波ブックレット
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