「何でやったか、早く真相を話してほしい」。先月12日の県議選投票日に、石岡市区(定数2)で当選した戸井田和之氏(46)の後援会事務所に保冷車が突っ込み、叔父の戸井田利雄さん(62)が死亡した事件は16日、窃盗と器物損壊容疑で逮捕された設楽啓一容疑者(43)が指定暴力団山口組系元組員だったことで、遺族には逮捕の安堵(あんど)より戸惑いが広がった。戸井田氏は県議選の票とりまとめを依頼するなど暴力団組織との関係について「まるっきり(ない)」と否定し、「複数犯でしょうから残りも捕まえてほしい」と全容解明を促している。【杣谷健太、橋口正】
同事務所は事件前日にも、2人組に消火器の中身をまかれるなどの嫌がらせを受けており、石岡署捜査本部は設楽容疑者の関係者宅など十数カ所を家宅捜索し、他に事件に関与した者がいないか調べている。
設楽容疑者が事件後の先月中旬に破門されるまで所属していた暴力団事務所=石岡市染谷=では午前10時半すぎ、捜査員十数人が約1時間半にわたり家宅捜索を終え、段ボール2箱の資料を運び出した。事務所入り口は防犯カメラが2台が設置され、高さ約3メートルの黒い鉄製の門と石の壁で囲まれ、敷地内の様子は見えない。黒い楯を持った捜査員が警備する中、周囲は物々しい雰囲気に包まれた。
事件の背景に暴力団組織の関与が浮上したことに対し、戸井田氏は16日夕、同市内の後援会事務所で行った記者会見で、「(動機は)さっぱり分からない」とトラブルを否定。選挙期間中、暴力団関係者から電話の脅迫があったとする一部報道に対し「家族も聞いていない。ありえない」と語気を強めた。
一方、設楽容疑者について「約30年前に地元の祭りで会い、あいさつをする程度。2、3年前に会ったっきり」と話した。
毎日新聞 2011年1月17日 地方版