●読売新聞配信記事 読売新聞は16日、「石川議員の再聴取録音、小沢氏公判に証拠申請も」という見出しで次の記事を配信した。
小沢一郎・民主党元代表(68)の資金管理団体「陸山会」の政治資金規正法違反事件で、同会元事務担当者・石川知裕衆院議員(37)(起訴)が、東京地検特捜部の再聴取の模様を録音していた問題で、弁護側は2月7日の初公判で、この録音を基に「供述を誘導された」と主張する方針を固めた。
東京地裁は録音記録を証拠採用するとみられる。近く強制起訴される小沢氏の公判でも弁護側が証拠申請する可能性があり、小沢氏の関与を認めた「石川供述」の評価にどの程度、影響を与えるかが焦点となりそうだ。
再聴取は約5時間で、石川被告はその全過程をICレコーダーでひそかに録音していた。弁護側が録音を基に、書き起こした証拠書類は約30ページに上るという。
●石川被告の起訴事実 石川被告に対する公訴事実は「公設第1秘書の大久保隆規被告(48)は小沢民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の会計責任者だった。元私設秘書で衆院議員の石川知裕被告(36)と元私設秘書の池田光智被告(32)は大久保被告を補佐していた。
石川被告は大久保被告と共謀し、2004年分の政治資金収支報告書の収入欄に、小沢氏からの借入金4億円と関連政治団体からの寄付計1億4500万円を記載せず、支出欄に土地取得費約3億5200万円を記載しなかった。」
である。
●鷲見一雄の視点 石川被告に政治資金規正法違反(収支報告書の不記載)が成立することは盗聴録音の内容がどうであろうと間違いない。04年分の政治資金収支報告書の収入欄に、小沢氏からの借入金4億円と関連政治団体からの寄付計1億4500万円を記載せず、支出欄に土地取得費約3億5200万円を記載しなかった」のは客観的証拠によって証明されているからだ。
そもそも、検察は「時の国家権力(体制)や社会的・経済的強者を守る重要な役割を担う機関」である。鳩山内閣を支える与党議員から「奇計を用いて再捜査尋問内容を録音される」ことなど「奇計に嵌められた検事の間抜けさや傲慢さも問題がある」が、「奇計を用いた石川被告も現職国会議員として問題だ」と感じる。少なくとも政権与党のナンバー2だった小沢ファミリーの採る手法ではない。
石川被告の弁護側は《盗聴録音を基に「供述を誘導された」と主張する方針を固めた。》という。読売は「東京地裁は録音記録を証拠採用するとみられる」と書いているが、私は前にも述べたように石川被告の有罪には影響はないと捉える。
読売は《近く強制起訴される小沢氏の公判でも弁護側が証拠申請する可能性があり、小沢氏の関与を認めた「石川供述」の評価にどの程度、影響を与えるかが焦点となりそうだ。》と見立てているが、私は「影響はない」と読む。検察が小沢氏を起訴しているわけではないからだ。
間違ってもらっては困る。小沢氏に公訴提起するのは検察官ではなく指定弁護士であることを。指定弁護士の小沢氏強制起訴によって裁かれるのは「小沢氏と小沢氏を不起訴処分にした検察」なのである。
●西欧の諺と日本の検察 西欧には「法は蠅を捕まえるが、しかし熊蜂は逃げるにまかせる」という諺がある。日本の検察は「政府与党の大物の秘書は逮捕・起訴するが、与党幹事長への処分は手ぬるい」という前例を鳩山、小沢氏で作った。
しかし、国家は「『法網恢恢疎にして漏らさず』に少しでも近づけよう」と検察審査会法を改正し「検察が大物を不起訴にしても検察審査会が2度に亘り『起訴相当』の議決をすれば『大物は強制起訴』される制度とし、備えていたのである。こっちも前例を作った。私はこの制度を支持している。検察は「日本では蠅も熊蜂も平等に処分するのが正しい」と考えているからである。
検察審査会は「強制起訴すべし」と議決した。その不利益証拠の提供者である石川被告が「反検察的発想から出た『不利益証拠無効取り調べの証拠』作る目的の『盗聴録音』」をした。これは検察が小沢氏を起訴しているのならともかく、こんな奇計を用いて得た証拠を検察審査会の「強制起訴潰し」に使おうなど私は断じて認めることはできない。むしろこんな奇計を用いる「小沢ファミリー」は許せないと思う。鳩山政権下では「小沢氏が強者であって検察は弱者であった」のである。「小沢ファミリー」は誤解していたのではないか。