ペニーオークションでサクラやbotが使用されている証拠
これまでの流れは関連記事をお読みください。
・怪しげなオークションサイトに気をつけろ(前編):ペニーオークションの問題点
・怪しげなオークションサイトに気をつけろ(後編):ペニーオークションサイトも騙されている
・ペニーオークション情報は嘘だらけ。全部詐欺サイトと思ったほうが安全
・次々と閉鎖するペニーオークションサイト
おさらい
以前の記事全部に目を通してもらったほうが確実だが、とりあえずこの記事だけでも内容がわかるように簡単にペニーオークションの説明をしたい。
一般的なオークションでは、場を提供するサイトは手数料で収入を得て、出品者は要らない物を処分して収入を得て、落札者は自分の希望する価格で商品を手に入れられる。
ペニーオークション(ペニオク)では、サイト運営者=出品者なのでどちらかというとショッピングサイトに近い。低価格でスタートした商品に対して入札するたびに手数料を取られる。最後に入札した人が商品を購入する権利を得る。手数料が75円のサイトが多いが、1入札で1円上昇の設定の場合、1万円の商品を1000円で落札されてもサイトは7万円以上の手数料収入を得る。落札できなかった人は手数料だけ取られてしまう。
仕組み上、サクラ(運営者による入札)、bot(システムに組み込まれた自動入札ユーザ)が存在すると、一般参加者は落札が不可能になり、ペニオクサイトは商品を用意する必要すらなくなってしまう。完全な詐欺行為だが、これを外部から見破ることは困難である。
さて、ここからが本題。
先日、閉鎖したペニオクサイトを探していたら、検索結果に気になるものが出てきて、それを解析したところペニーオークションでサクラの証拠が出てきた。
謎のログを取得
出てきたのは下の画像のようなデータだ
実際にはHTML形式で普通にブラウザで閲覧できる状態になっており、Googleの検索結果にそのまま表示されていた。
記録されていたのは「日時」「ユーザ名と思われる文字列」「何らかのコメント」の3項目で、複数ページに分割されていたが、2843行を取得することができた。それを表計算ソフトに落とし込んだのが上の画像だ。
その後、システム側で対策されたようで現在は閲覧できない状態になっている。サーバ設定の誤りかシステムの不具合で、本来公開されるはずのない情報が公開されていたのだと思われる。
私には特定のペニーオークションサイトそのものが問題だと考えており、昨年からその危険性を告知するのが目的で今回のような記事を書いている。特定のサイトを潰す意図はないので、ユーザ名は伏せて、文字列の部分も若干加工している。
さて、これは何のデータだろうか?
サイト上のデータと照らし合わせると、「所持する入札コインが追加された日付、追加されたユーザ、追加された理由」であると考えて間違いなさそうだ。ペニーオークションサイトでは、クレジットカード経由で現金を仮想通貨(コイン)に替えてオークションに参加する仕組みとなっている。
追加されたコインの枚数が表示されていればもっと詳しく解析できたと思われるが、仕方がない。このデータで不正があるかどうか解析してみた。
コインが追加されるのは以下のパターンが多いようだ
・会員登録時の無料コイン
・クレジット決済によるコイン購入
・オークション商品として出品されるコインの落札
・キャンペーン等によるコイン追加
・その他
謎のログを解析
まずは、先頭から順番にデータを見る。
このサイトは2010年6月にテスト運用を開始し、7月に正式サービス開始されたようだが、テスト運用開始前のデータも入っている。おそらく非公開でのテスト運用中のデータだろう。空欄になっているのは削除されたユーザか?
あとの解析で活用するために、テスト運用開始日よりも前に登録されているユーザのデータを黄色でマーキングした。
非公開状態で作成されたユーザなので、以下の図で、黄色くなっている行は運営者用のアカウントに対するコイン付与と考えて良い。
続いてテスト運用期間のデータを見る
先ほど黄色でマーキングしたユーザが出てくる。
テスト入札を行うために必要なコインを補充しているようだ。クレジットカード課金のテストもしているようだ。
まあ、テスト運用期間なのでテストユーザがいても全く問題はない。普通はこういったテストデータは正式なサービスインの際にいったんデータベースを全削除すると思うが、まあ、それはいいだろう。
謎のログから浮かび上がる疑惑
さて、正式にサービスインしてからのデータを見てみよう。
勝負?
再度、この表の見方を説明すると、黄色い行は運営者のアカウントで、それぞれの項目は「所持する入札コインが追加された日付、追加されたユーザ、追加された理由」である。さらに追加すると、背景が白い行は一般ユーザとは限らない。サービス開始後に運営者が自分用のアカウントを追加することが可能だからだ。
いったい何の勝負だろうか?落とすとはどういうことだろうか?
オークションで「落とす」というのは落札するという意味だ。運営者のアカウントでそれをやってしまったらいわゆるサクラではないだろうか?まさか、そんなことが…。
つづいて別の行も見てみる。繰り返すが、正式稼働後のログである。
「打倒xxxx(ユーザ名)」と書かれている。
これはどういうことだ?
こちらにも「打倒xxxx(先ほどとは違うユーザ名)!」と書かれている。
ちなみに、その次の行でクレジット決済(コイン購入)をしているユーザ名が書かれていた。
ちなみに、運営者アカウントの打倒ターゲットとなった2者とも「正式サービス開始後」の登録ユーザで、何度か「クレジット決済」を行っている。つまり、一般ユーザである可能性が高い。一般ユーザに対して「打倒」とは穏やかではない。
これはあくまで推測だが、落札されたくない商品に対してあるユーザが入札を行い、それに対抗するためにテスト用のアカウントにコインを与え、それで落札を阻止しているのではないだろうか?
そんなことが行われていいのだろうか?それではまるでサクラではないか。サクラが居る可能性があると指摘していたが、まさか本当にいるなんて。
謎のログで明るみになる真実
そして、衝撃的な文字列を目にしてしまった。「さくら」
ああ…。
謎のログをおもらししたサイトについて
さて、このログを流出させたサイトが99.99%ぐらいの確率でサクラを使っていることが明らかになったわけだが、自分はこのオークションサイト運営者も被害者だと思っている。
ログを解析したところ、無料登録だけ行ったユーザは3桁いるようだが、クレジット決済を繰り返している客(=常連客)は十数人しかいない。購入コイン数が不明なので、なんとも言えないが多く見積もっても1ユーザあたり数万円程度の黒字にしかならないだろう。まともな人間なら赤字が10万になる前にペニオクから手を引く。
それに対し、このサイトが開設や運営につぎ込んだ金はどれくらいだろうか?おそらくトータルで100万円以下ではないだろう。どう考えても大幅な赤字だ。サイトを続ければ続けるほど苦しむことになる。
以前の記事で、ペニオク運営者もコンサル会社の食い物になっていると指摘したが、そのとおりの図式になっていたのではないか?
この記事で会員数が4桁以上ないと大幅な収益は見込めないことを指摘したが、20人以下の常連ユーザしか集められないならサクラを使用しないと運営は不可能だ。
このサイトは昨年頭あたりから開設の準備をしていたようだが、その時点でいくつもペニオクサイトは乱立していたし、冷静な判断力があればこのようなサクラやbotに依存しないと継続できない詐欺的な商売が長続きできないことは分かることだろう。おそらくコンサル会社から「確実に儲かる」と言いくるめられてシステムを購入したのではないだろうか?
サクラを使用しなければ、もっと早い段階で破綻していただろうが、サクラを使ったことでコンサル会社と共犯関係になってしまっていることが問題だ。内心「騙された!」と思っても、誰にも訴えることができない。サクラを使ったペニオク運営という明らかな詐欺行為を自分も働いているからである。
botは存在するか?
話を戻して、ペニーオークションサイトで行われているもうひとつの不正、「bot」についても考えたい。
botに関してはプログラムの中身を見ないことには100%確実な証明はむずかしいが、先日の記事で例としてあげた「4万円の精米機を11万円で購入する権利を得るために、複数のユーザが合計で875万円出し合っている状態」はほぼ確実にbotと言えるだろう。
今回のログでもbotの証拠は得られなかったが、今回のサイトの公式blogで運営者が「本来botが組み込まれたシステムだったが開発元に無理言ってbot機能を取り除いてもらったので、このサイトはbotが存在しません、安心です」といった趣旨の発言をしていた。
実際にこのサイトでbotが排除されたかどうかは不明だが、無理言わないとbotが外せないんなら、少なくとも同じ開発元からペニオクシステムを購入したサイト(複数確認済み)は確実にbotがいるわけね…。
販売元がbot組み込んでるし、それを外したと主張するサイトはサクラ使ってるし、「99%OFFでWiiが買える」とかどう考えても景品表示法違反の誇大広告だしてるペニオクが綺麗サッパリ消えることを期待しつつ、今後も見守っていきたい。
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