政治【主張】日朝交渉 安易な対話再開は禁物だ2011.1.17 02:54

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【主張】
日朝交渉 安易な対話再開は禁物だ

2011.1.17 02:54

 前原誠司外相が15日の韓国訪問で金星煥外交通商相との会談や李明博大統領への表敬をこなしたが、懸念を指摘しておきたい。日朝交渉の問題である。

 外相会談では金外通相もこの点でくぎを刺したもようで、「日朝の前に南北対話があるべきだ」との方針が確認された。にもかかわらず、前原外相は記者団に「(南北優先が)前提だが、何らかの(日朝の)接触はあり得るかもしれない」と語った。

 前原外相発言は、年末から年始にかけて、北朝鮮との直接協議再開に意欲を表明した記者会見を踏襲している。この意図について首をかしげざるを得ない。

 とりわけ気になるのは「(核をめぐる)6カ国協議再開の是非にとらわれずに日朝の話し合いは行われるべきだ」との内容だ。これでは、日米韓の連携の枠外での日朝対話の再開になりかねない。

 案の定、北朝鮮の朝鮮中央通信は前原発言を「肯定的な動き」と評価し、北擁護の姿勢を保つ中国も「歓迎する」(武大偉朝鮮半島問題特別代表)と後押しする姿勢を明らかにした。

 前原氏の発言は、拉致問題などの進展を念頭に置いているのだろう。だが、北は福田康夫首相当時の平成20年8月の日朝実務者協議で、拉致被害者の再調査に関する委員会設置を約束しながら、翌月の福田内閣退陣を理由に「延期」を通告した。安易な直接対話の再開は、北の術中に陥る危険性をはらんでいる。

 拉致問題は日本にとって重大な人道、主権問題である。だからこそ、外相は自らの戦略について日本国内と同時に韓国側にも丁寧に説明する必要がある。不用意な発言では拉致問題の解決も、日米韓の結束も損なってしまう。

 両外相が喫緊の課題である北朝鮮への対応で、改めて日米韓3カ国の結束を確認したことは重要である。安全保障面で日米、米韓に比べ、歴史問題や日本固有の領土を韓国が不法占拠する竹島問題を抱える日韓関係は脆弱(ぜいじゃく)だ。

 今回の外相会談では対北で日韓の緊密な連携維持が強調された。防衛協力を含む日米韓の結束強化につながると期待できる。

 北朝鮮はまず、韓国軍哨戒艦撃沈事件と延坪(ヨンピョン)島砲撃の謝罪と賠償を行い、核廃棄を行動で示さなければならない。それを棚上げにした「対話」は信用できない。

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