2011年1月17日7時8分
劇団自由人会の団員から、阪神大震災について話を聞く児童ら=岡山県笠岡市の市立今井小学校、森写す
震災について調べた成果を5年生に伝える6年生の児童ら=兵庫県芦屋市の市立精道小学校、森写す
阪神大震災から16年。当時の記憶が薄れつつあるなか、若い世代にどのように教訓を伝えていくかが課題になっている。学校現場では、子どもが主役になり、演劇や総合学習を通して語り継ぐ試みが続けられている。
■劇団公演に児童参加
「誰か手伝ってください! お父さんが下敷きに!」
「お母さん。助かってんから、泣いたらあかん」
昨年12月20日、岡山県笠岡市の市立今井小学校の体育館。6年生8人が、劇団自由人会(神戸市)の団員と一緒に演技の練習をしていた。横倒しになった高速道路や、何本もの火災の煙があがった震災直後の写真を見せてもらいながら当時の様子も聞く。稽古は約2時間に及んだ。
原作は5人の児童が死亡した兵庫県西宮市立樋ノ口小学校の児童の作文をまとめた本「6年3組の阪神大震災」。同級生を失った悲しみや、衝撃を乗り越えようとする子どもらの姿が描かれている。
自由人会は1994年1月に結成された。震災で神戸市東灘区の事務所兼稽古場は全壊。「6年3組」を知って台本化し、95年12月から全国の小中学校などで公演を始めた。当初は団員だけで演じたが、震災から10年がたったころから、被災地でない学校から「もっと明るい作品を」と求められた。年間80回以上の公演は10回ほどに減り、2007年に上演をやめた。
しかし、神戸市内の小中学校から「やめないで」との要望が相次いだ。子どもに実技指導などをする文化庁の「本物の舞台芸術体験事業」に08年度選ばれたのをきっかけに、舞台に児童も参加するやり方を取り入れて復活した。
「劇が台無しになるのではないか」。劇団代表の森もりこさん(55)は不安だった。