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きょうの社説 2011年1月17日
◎金沢・南砺の交流 真宗の共通土壌も耕したい
金沢、南砺両市が昨年に続き、今年も特産品や伝統芸能などを紹介するイベントをそれ
ぞれの地域で開催することになったのは、石川、富山両県に「チーム加賀藩」の意識を浸透させる心強い動きである。共有する歴史を生かし、両地域がきずなを深めるのであれば、親鸞750回忌という浄土真宗の大きな節目に合わせ、今年は「真宗王国」という、もう一つの共通土壌を積極的に耕してはどうだろう。北陸に真宗王国の礎が築かれたのは、本願寺8代の蓮如が越前吉崎に御坊を構え、北陸 各地を精力的に布教して回ったというのが定説である。だが、南砺市には井波瑞泉寺を建立した本願寺5代綽如(しゃくにょ)、同じく井波を拠点にした6代巧如(ぎょうにょ)の伝承があり、蓮如以前の真宗の歴史が息づいている。 親鸞の血を引く歴代宗主が金沢や南砺周辺に深く関与していたことは、昨年から始まっ た東西本願寺による北陸布教合同調査で次第に明らかになってきた。この地域には、すでに真宗が広がる下地が整っていたわけである。 五箇山には蓮如の弟子で、行徳寺を開いた「赤尾の道宗」の物語が語り継がれている。 学問はなくても、真宗の教えを直感的に悟り、信心深く生きた念仏者を「妙好人(みょうこうにん)」と呼ぶが、金沢が生んだ世界的な仏教哲学者、鈴木大拙はこの道宗を「妙好人」の筆頭に挙げた。禅から仏教に入った大拙もまた、ふるさとの真宗土壌を深く見つめた人である。 東西という教団の壁を取り払えば、金沢、南砺周辺に東西分派以前の素朴な真宗土壌が 広がっていることに気づく。加賀藩の歴史の基層にある一つの姿といえ、そうした精神的な土壌の共通性を知ることで「チーム加賀藩」としての結束も強まるはずである。 蓮如の道をたどるイベントは、金沢、南砺交流の中で定着し、南砺では新たに道宗が歩 いた古道を整備する動きもある。東西本願寺の合同調査の成果を生かせば、信仰の道に一層の厚みが加わるだろう。「塩硝の道」に代表される加賀藩の道、さらには真宗布教の道を積極的に掘り起こし、両地域の歴史の縦糸と絡めながら交流基盤を強固にしていきたい。
◎生活保護費不正 法制度の見直し迫られる
長引く景気の低迷と雇用情勢の悪化により、生活保護受給世帯が大幅に増えるなか、生
活保護のほか雇用保険や年金など社会保障制度の給付金を狙った詐欺事件も全国的に増加している。石川県内でも最近、生活保護費や生活支援金を不正受給した疑いで逮捕される事件が相次いでいる。生活保護費などをめぐる不正の増加と悪質化に伴い、法制度の見直しも迫られている。厚生労働省の昨年10月時点での集計によると、全国の生活保護受給世帯は前年同月よ り14万世帯増の141万7820世帯に上り、過去最多となった。一方、生活保護費や雇用保険などの不正受給事件も増え続けており、警察庁のまとめでは、09年の摘発件数は73件(4億円強)で06年のほぼ2倍に増加した。県内の例にも見られる通り、生活困窮者らを利用し不正受給で稼ぐ「貧困ビジネス」がこのところ目立っている。 こうした状況は、生活保護制度の実施主体である自治体としても看過できず、生活保護 の財政負担の増大に苦労する政令指定都市の市長会は、不正防止策の一案として、生活保護を受ける人の資産状況などに関する自治体の調査権限の強化を求めている。 現行の生活保護法では、自治体が必要と判断したとき、被保護者や扶養義務者の資産、 収入について、金融機関などに報告を求めることができるが、実際には本人の同意書が必要とされ、資産状況の確認は難しいという。このため、同意書がなくても、正当な理由がない限り、自治体への回答を金融機関に義務付けるべき、というのが政令指定都市市長会の提案である。この提案は昨年10月、国に提出した生活保護制度全体の改革案の中で示された。 同市長会は現行の生活保護制度について、1950(昭和25)年の創設以来、抜本改 革が行われておらず、制度疲労を起こしているととらえ、被保護者の就労意欲を喚起し、自立支援を強化することを訴えている。生活保護の現場からの切実感あふれる改革提案であり、政府も真正面から受け止めて検討する必要があろう。
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