スーダン:カラアザールが猛威をふるう南部からの報告―証言1: 患者の母─
2010年12月27日掲載
過去8年間で最大規模のカラアザール(内臓リーシュマニア症)の流行が広がっているスーダン南部で、国境なき医師団(MSF)は緊急対応を展開している。上ナイル州マラカルの病院で、3人の息子の回復を見守っている母親に話を聞いた。
私の名前はシンジン・ウォル、4人の子どもの母親です。3人の息子がこのマラカル病院に入院してカラアザールの治療を受けています。
マラリア、チフス……? 診断が確定するまで
シンジン・ウォルと3人の息子たち(手前3人)。
末息子のデングは2歳です。9月に具合が悪くなり、非常に高い熱が何週間も続きました。嘔吐と下痢を繰り返し、ガリガリにやせてしまいました。そこで、私たちの住むアボング村から一番近いバリエットの診療所に連れて行きました。息子はマラリアと診断され、マラリアの薬をもらいましたが、よくなりませんでした。それで今度は腸チフスの治療を受けたのですが、それも効果はありませんでした。
診療所では病気の原因がわからなかったため、デングは45日前にバリエットからマラカル病院に搬送されました。その時点ではバリエットでは、カラアザールの検査はしていなかったのです*。私たちは息子をマラカルに連れてきて、MSFがこの病院でカラアザール治療センターを開設していることを初めて知りました。そしてようやく息子はMSFの医師からカラアザールの診断を受け、治療が始まったのです。
* MSFは、カラアザールの緊急援助活動を最初にマラカル病院で開始し、その後、へき地でアウトリーチ活動を開始した。MSFのアウトリーチ活動チームは、11月第4週からバリエットにカラアザール治療センターを設置している。アウトリーチ活動とは、こちらから出向いて、援助を必要としている人びとを積極的に見つけ出し、サービスを提供すること。
つらい治療、回復への道のり
カラアザールの治療は、とてもつらいものです。デングはカラアザールの薬を投薬されている間、非常に体調が悪く、黄疸(おうだん)が出ました。おじの血液を輸血しなければならなくなりましたが、それで持ち直しました。
でも今度は肺炎にかかってしまったのです。病状はとても重く、もう助からないかと思うほどでした。MSFの医師が懸命に努力してくださったおかげで、デングはやっと回復したのです。デングはカラアザールも肺炎も治って、今日退院することができました。息子がこうやって自分の脚で元気に立っているところを見られるなんて、先月は夢にも思わなかったことです。
続いて他の息子たちも
私たちがデングの治療のためにマラカルにいる間に、他の2人の息子、7歳のマコングと5歳のガラングも病気になりました。マコングは毎夕とても高い熱を出し、乾いた咳をして、食欲がありませんでした。ガラングは嘔吐と下痢をするようになり、咳が出て、食欲もありませんでした。2人とも体重が大幅に減ってしまいました。
2人はマラカルのMSFの治療センターでカラアザールの検査を受け、2人とも陽性と診断されました。いまは治療を受けています。ガラングは注射を打たれるとき、痛くて泣きわめきます。毎日、「どうか注射を受けて」と子どもたちに頼んでいます。2人は「イヤだ、痛いもん。やりたくない」と言って拒もうとするので、私は毎日2人を連れて行き、泣く息子を抱きしめながら注射を受けさせています。ひどい状態ですが、私たちは子どもたちがよくなるように必要な苦難には耐えるつもりです。
家族がみな家にそろう日を待つ
先週、夫がマラカルに来て、村へ帰ろうと言いました。小麦が収穫期を迎え、害虫に食われないように畑を守らなければならないからです。夫はこの1週間一緒にマラカルに滞在し、子どもたちの世話を手伝ってくれました。明日はマコングの最後の注射の日です。夫はそれが済んだらマコングを村に連れて帰り、小麦の収穫を手伝わせる予定です。私はガラングの治療が終わるまで、まだ幼いデングとともにここにいます。
私たちは多くの苦難に直面していますが、子どもたちが皆もうすぐよくなって、また一緒に村へ帰れることに心から感謝しています。
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