談話・コメント

外務報道官談話

常設仲裁裁判所によるスーダン・アビエ境界線問題に係る判決の発表について

平成21年7月24日

  1. 我が国は、22日、常設仲裁裁判所(オランダ、ハーグ)により、アビエ境界線問題の判決が発表されたことを、係争の平和的解決及びスーダン南北包括和平合意(CPA)の履行に資するものとして歓迎します。
  2. 我が国は、「IDP(国内避難民)帰還・アビエ議定書履行のロードマップ」にかんがみ、CPAの当事者である南北スーダンが本判決を最終的かつ拘束力のあるものとして速やかに受け入れ、同ロードマップ及びCPAの諸事項の履行を真摯且つ早急に進めるよう求めるとともに、すべての勢力に対し武力による解決に訴えることのないよう自制を求めます。また、我が国は、スーダン国民統一政府がアビエ暫定政府に対する資金支援を速やかに行うことを期待するとともに、CPAの両当事者に対し、国連スーダン・ミッション(UNMIS)が今次判決発表後の治安維持の役割を十分に果たすため、アビエ域内におけるUNMIS部隊の移動の自由を保障するよう求めます。
  3. 我が国は、2008年5月のアビエでの軍事衝突で生じた避難民を救済するために約350万ドルの人道支援を行ったほか、総額2,300万ドルに上るスーダンDDR(武装解除・動員解除・社会復帰)支援を実施する等、これまで積極的にCPA履行を支援してきています。2010年の総選挙及び2011年の南部スーダン住民投票等のCPA上の重要な課題を勘案しつつ、今後ともCPA履行を積極的に支援していく考えです。

【参考1】南北包括和平合意(CPA)及びアビエ境界問題

  1. CPAは、20数年に及び、400万人を超える国内避難民が発生した南北スーダン内戦を終結させた和平合意(2005年)。主な内容としては、(1)自治権を有する南部スーダン政府の成立、(2)南部スーダンの帰属を問う住民投票の実施(2011年実施予定)、(3)南部の宗教的自由(イスラム法の不適用)、(4)南部スーダンで産出される石油収入の南北原則均等配分などがある。
  2. スーダン中央部に位置するアビエ地域は、南北内戦時の激戦地の一つであり、また豊富な石油資源を埋蔵していること等から、南北双方が領有権を主張しており、帰属が決定していない。
  3. アビエ議定書は、CPAの一部を構成し、行政機構の設立、住民投票による帰属問題の自決等の同地域に係る問題の解決に向けた重要事項について規定されているが、同地域の領域を巡り南北間で見解が分かれたため、同領域の画定に関する紛争を常設仲裁裁判所(PCA)(於:ハーグ)に付託していた。
  4. PCAの今次判決は、基本的に北部の主張に沿ったものとなっているが、南部も同結果を受け入れることは可能と表明している。

【参考2】常設仲裁裁判所の概要

  1. 常設仲裁裁判所(PCA)は、1899年の第1回ハーグ平和会議で採択された「国際紛争平和的処理条約」により1901年に設立された国際裁判所であり、2以上の紛争当事者間の紛争を、通常、当事者が選任する裁判官による仲裁裁判により解決することを目的とする。この裁判所は、国と国との間の紛争の他、国と国以外の主体(地域的主体、私人、法人等)との間の紛争も扱うことができる。
  2. 本件紛争は、昨年7月7日のスーダン政府とスーダン人民解放運動(SPLM)との間の仲裁合意に基づいて常設仲裁裁判所に付託されたもので、5人の裁判官から成る仲裁裁判部が今般本件に関する判決を下した。
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