人気急上昇中のスリムクラブ・真栄田賢さん(左)と内間政成さん=東京都・品川(田盛良一撮影)
昨年12月の若手漫才日本一決定戦「M―1グランプリ2010」で2位となり、強烈な印象を残した県出身のお笑いコンビ、スリムクラブへのテレビ番組の出演や取材の依頼などが殺到し、人気が急上昇している。沖縄から東京へ進出し、思うように笑いを取れない苦しい時期も乗り越えてきたボケ担当の真栄田賢さん(34)、ツッコミ担当の内間政成さん(34)の心境や今後の目標を聞いた。
◆3月末まで休みなし
所属する「よしもとクリエイティブ・エージェンシー」によると、M―1グランプリ前まで仕事は劇場での定期ライブなど週に3件程度。収入が少なく、真栄田さんは、家賃の支払いも厳しい状況で遊んでいたゲームや漫画を売って、生活費の足しにしていた。内間さんは航空会社の客室乗務員の女性と結婚し、妻の収入に支えられていたという。
ところが、M―1グランプリで他のコンビとは一線を画す、ゆったりとした間と独特なネタで一気に注目が集まり、二人の状況は一変した。グランプリ決勝があった昨年12月26日の番組終了後、その日のうちに約160件の出演・取材の問い合わせを受け、担当マネジャーもすぐには整理が追い付かない状態だった。
現在、テレビ番組の出演や取材依頼、劇場でのライブなどを含め、1日に6件以上の仕事のある状況が毎日続き、3月末まで休みが1日もないという多忙さだ。
真栄田さんは「本当にありがたい。『笑っていいとも』では、憧れのタモリさんと共演させてもらい、感激した」と喜ぶ。
互いを認め合うコンビの結束力は強い。スリムクラブの強みについて、真栄田さんは「内間の醸し出す優しい雰囲気」、内間さんは「真栄田のインパクトのあるフレーズ」と互いを持ち上げる。
◆苦しみ乗り越え
今でこそ人気が急上昇しているスリムクラブだが、過去数年間、苦しい時期を支え合いながら乗り越えてきた。
二人が知り合ったのは、琉球大学の学生だったころ。人を笑わせることが好きで、真栄田さんは1999年、内間さんは翌年に沖縄のお笑い事務所「オリジンコーポレーション」へ入り、定期ライブなどで経験を積んだ。当時は、コンビを組まず、それぞれで活動することが多かった。
内間さんは、2002年から東京へ活動の拠点を移した。「よしもと―」が経営するお笑いの養成学校で学んだ後、いろんな芸人とコンビを組んでは、解散する状態を繰り返した。
そんな中、真栄田さんは沖縄で人気が出て実績を残し、04年に東京へ。先に東京で活動していた内間さんが「僕と組めばよしもとに入れる」と誘い、05年にスリムクラブを結成した。
当初は結果を出せず、悩んだ。内間さんは「観客に受けない中で、常に不安だった」と漏らす。自信を喪失した相方に対し真栄田さんは「やりにくかった。(内間さんが)コンプレックスを持つ中でカウンセリングをしているような状態だった」と明かす。内間さんは「ネタに集中できていないと相方に教えられた。今の自分を出せば良いと思い、徐々に楽になった」。以後、独特なネタで徐々に持ち味を発揮。M―1グランプリでは09年に準決勝へ進出するまでになった。
◆沖縄で番組を
昨年、最後のM―1グランプリで決勝進出が決まった際、真栄田さんが琉球新報へ寄せたコメントには、苦しかった時期の心境がつづられていた。
「東京に出て来て6年。自分で納得のいく結果が出せず悩み、不安になる時もあった。しかし、心の中にあった『絶対にイケる。俺たちは面白い。絶対に売れる』という強い思いと、支えてくれるたくさんの人たちのおかげで、あきらめずに夢を追い掛けられた」
強い意志を持ち続けたコンビが今、飛躍の時期を迎えている。
バラエティー番組への出演が増え、ネタだけではなく、臨機応変な話術も求められてくる。内間さんは「最初は緊張したが、もともとトークは好きだったので今のところ、何とか良い感じで楽しくできている」と充実感を漂わせる。
今後の目標について「内地でレギュラー番組を増やし、冠番組を持つのはもちろん、地元・沖縄でレギュラー番組を持ちたい」と意気込む。競争や浮き沈みの激しいお笑い界で“一発屋”で終わらず、定着できるかどうか、今後の活躍を期待したい。(古堅一樹)
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