社会尻に火がついた 朝日新聞の「電子版」デジタル化

掲載日時 2011年01月15日 11時00分|掲載号 2011年1月20日 新年渾身特大号

 インターネットが情報社会に定着した中、朝日新聞が間もなく、「電子版」を発行することが分かった。新聞業界では、日本経済新聞に次ぐ電子版進出。部数と広告という「収入の両輪」の減少に苦しむ新聞業界の経営が大きく変わる前兆との指摘も出ている。

 朝日新聞内部に流れている情報では、「デジタル対応」と呼ぶ電子版は今年2月下旬、遅くても3月上旬にスタートする。『iPad』(アイパッド)や『iPhone』(アイフォン)、パソコンに対応する形をとる。いずれは、同社が提携するauが採用するアンドロイドにも対応できるようにするという。
 「1カ月の料金は、朝日新聞をとっている場合は1000円、とっていない場合は3800円になる見通し。契約の受付はASA(朝日新聞販売所)が受け付け、紙面は基本的に東京本社発行の最終版(14版)1日1回の発行だが、24時間体制で更新するそうです。1面から最終面まですべてのページが読めるほか、スクラップ機能があったり、古い紙面を読む機能を設けたりする計画。現在ある『アサヒ・コム』とは並立する形になるが、“電子版会員が50万人を超えたら、アサヒ・コムは縮小する”としています」(朝日新聞記者)

 昨年、スタートした日経電子版は、紙の購読者が1カ月1000円、購読していない場合は4000円。料金などからしても、朝日も日経とほぼ同じ形をとることになる。
 もっとも、企業などに支持される日経でさえ、現在の有料会員は10万人程度にとどまっているとされる。朝日が「50万人超えたら」というのは、かなり先になるとの見通しが有力だ。
 「かつては、景気の波に左右されないといわれた新聞業界だが、ここ10年ほど、部数は減り続けている。10年前に2000億円あった朝日新聞の広告収入は、'09年度には800億円と半分以下に落ち込んでいます」(広告代理店幹部)

 「ウエブ版」への流れが急加速する一方、紙面の質低下を心配する声も少なくない。速報性に重点を置くあまり、新聞独特の解説性が落ちる。これは週刊誌などにも伝播するだろう。
 「本年度から小中学生の教育指導要領に『新聞を読もう』という項目が新設される。あまりにも活字を読まなくなった結果、思考力が落ちた子供たちへのバックアップなのだが、電子新聞は想定されていない。ネットが苦手なお年寄り対策はどうする、という問題も浮上してくる」(教育関係者)

 ちなみに、日本一の発行部数を誇る読売新聞は「あくまでも紙(の新聞)にこだわる」という基本方針を社内で伝えている。
 天下の朝日も背に腹は代えられない、か。