|
|
らせんの真実−冤罪・足利事件− <終章>
<3>「県境」 「足利」で広域捜査分断 共有されぬ有力情報(2010年7月30日 05:00)![]() 「言いづらいことだが、こんなことにならなければまた違った捜査ができたのかもしれない」 1996年7月の横山ゆかりちゃん(4)事件を指揮した群馬県警の元捜査幹部が今夏、重い口を開いた。 元幹部が指摘する「こんなこと」は、菅家利和さん(63)が再審無罪となった足利事件を指す。一審宇都宮地裁は菅家さんに無期懲役判決を下し、東京高裁も96年5月に控訴棄却を言い渡す。太田市内のパチンコ店でゆかりちゃんが突然失踪したのは、その2カ月後だ。 90年5月に足利市の保育園児松田真実ちゃん(4)を殺害したとして公判中だった当時の菅家さんは、足利市内で発生した79年の福島万弥ちゃん(5)事件と84年の長谷部有美ちゃん(5)事件も「自白」したとして栃木県警に殺人容疑で立件(いずれも不起訴で未解決)されていた。 「足利の連続女児殺害は菅家さんの犯行で片付いたものと誰もが考えた」。元幹部は率直に答えた。 「足利の3件がまっさらの未解決だったなら、県境の類似事件として両県警で違った視点の捜査をした可能性はある」 ■ ■ 菅家さんの再審無罪により、79年から96年にかけて足利、太田両市の県境約20キロ圏内で発生した計5件の女児殺害等の事件(図参照)は、いずれも未解決事件となった。 被害児5人のうち、小学2年生だった大沢朋子ちゃんを除けば4人の年齢は4、5歳。何者かに連れ去られた場所も、3人がパチンコ店だった。 発生日は朋子ちゃんの火曜以外はいずれも金土の週末と日曜。遺体で見つかった4人のうち3人の発見場所は、渡良瀬川と利根川の河川敷と犯行の対象や手口に共通項は多い。 5件は同一犯の犯行なのか、それとも事件ごとに犯人は別人なのだろうか。5件のうち数件が同一犯で、後は別人の犯行というケースもありうる。 「子供を狙う犯人がそう何人もいるとは思えない」。栃木県警の元捜査幹部は足利の3件は同一犯とする見方を崩さない一方、太田の2件との関連については途端に表情を曇らせた。 「こればかりは、真犯人を捕まえてみないと分からない…」 ■ ■ 真実ちゃんが殺害された90年の足利事件発生後、87年の朋子ちゃん事件を捜査していた群馬県警は栃木県警に捜査員を派遣し、情報交換を行い関連の有無などを調べた。 一方、市内で3件目となった足利事件に、栃木県警も群馬県警へ協力を依頼。同県警は約50人の専従捜査班を編成し、県境の太田市や桐生市で不審者の洗い出しなどを行った。 県警の枠を超えた広域捜査。が、実態は形式的な協力態勢だったという。 「自分たちの手で犯人を挙げたいと懸命にやる。筋のいい情報なんて、お互いに出さなかった」(栃木県警の元捜査員)。 両県警がそれぞれ捜査本部を設置した5件の女児殺害・誘拐容疑事件には、大量の捜査員が動員され膨大な捜査資料や参考人のファイルが積み重なる。 菅家さんの再審無罪で可能性が出てきた5件の関連性。が、2009年6月の菅家さん釈放後も、過去にマークした重要参考人らの有力情報を両県警が共有した形跡はない。 |
|
|
「下野新聞ホームページ SOON」に掲載の記事・写真・動画など無断転載を禁じます。著作権は下野新聞社またはその情報提供者に属します。
Copyright Shimotsuke Shimbun. |