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らせんの真実−冤罪・足利事件− <終章>
<2>「難航」 太田女児失踪も15年目 パチンコ店、足利に隣接(2010年7月29日 05:00)![]() わずか十数分の「犯行」だった。 1996年7月7日の日曜日午後、足利市に隣接する群馬県太田市高林東町のパチンコ店。自宅から車で5分ほどの同店に両親と来ていた保育園児横山ゆかりちゃん(4)は、同日午後1時45分ごろにパチンコ店を出たまま行方不明となった。 群馬県警が公開した店内の防犯ビデオの映像から、1人の不審な男が浮上する。サングラスに野球帽、黒のジャンパーを着た身長約158センチの男だ。 これまでの調べなどによると、男は午後1時27分ごろ来店。トイレに真っすぐ向かった後、パチンコ台を品定めすることなく店内をうろつき、午後1時半ごろ店内の景品交換所近くで遊んでいたゆかりちゃんに近づく。 その後長いすに座るゆかりちゃんの隣で約7分間、たばこを吸いながらゆかりちゃんに話し掛け、店外に誘い出すように右手で3回指さし、男は午後1時42分ごろ1人で店を出る。 ゆかりちゃんが男の後を追うように店を出たのは、その約3分後だった。 ■ ■ 「7月がつらい。7月がなくなってほしいというか、飛び越えていってほしい…」 今月15日、群馬県大泉町のゆかりちゃんの自宅。母親(44)は長女が失踪した7月を迎えるたびに、高まる不安や焦燥を抑えきれない。「でも、くよくよしていられない。ゆかりも心配するから」 発生現場のパチンコ店は、新聞の広告チラシを見た夫(43)に誘われ初めて行った店だった。店内では必ず、数分置きにゆかりちゃんを確認していた。 「ゆかりは店を出る前、私と夫のところに来ているんです。よく聞き取れなかったのですが、私には『おじちゃんが』と言っていた。その時、引き留めれば」。母親は今も自責の念に苦しむ。 ゆかりちゃんが店を出ておよそ5分後、母親は姿が見えないことに気付き夫と店内外をくまなく捜し歩いた。間もなくパチンコ店近くの交番に駆け込む。 が、不審な男とゆかりちゃんとみられる女児は、パチンコ店の周辺でさえ目撃情報はない。 男が店内にいた時間は、15分ほどだった。 ■ ■ 群馬県警は発生1カ月後に防犯ビデオの男の映像を一部公開。96年9月に略取誘拐容疑事件と断定し太田署に捜査本部を設置、ゆかりちゃんと接触した男を「重要参考人」として手配し特定を急いでいる。が、時間の経過とともに捜査は暗礁に乗り上げている。 「今年もイチゴのデコレーションケーキを買って、次女、三女とゆかりのお祝いをしたんです」。19歳になった今月11日の誕生日を、母親は成長したゆかりちゃんの姿を思い浮かべながら振り返る。 「最悪の覚悟もしています。でも、家族みんなゆかりが一日も早く帰ってきてほしいと願っている。生きていてほしい」 発生時、店内にはゆかりちゃんと同年代の女児もいた。 なぜ、ゆかりちゃんが狙われたのか。 事前の下見で確認後、ビデオの男は変装して再び来店した可能性はないのか。 サンダル履きだったその男は、パチンコ店近くが生活圏だったのではないか−。 未解決のまま15年目に入ったゆかりちゃん事件。ビデオの男も依然、不明だ。 [写真説明]事件発生の5日前、家族と鬼怒川温泉を旅行した際に母親が撮影した横山ゆかりちゃん。押さなかったゆかりちゃんも来年、成人式する |
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