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らせんの真実−冤罪・足利事件− <終章>
<1>「消息」 捜査中止の参考人複数 酷似する「ビデオの男」(2010年7月28日 05:00)![]() 「あのがに股の歩き方や背格好が、そっくりだと思った。足利事件の時におれたちが追っていた男だよ」 6月下旬、足利事件取材班に捜査員の1人が確信に満ちた口ぶりで意外な事実を打ち明けた。 犯人の精液とDNA型が一致したとして、再審無罪が確定した菅家利和さん(63)が足利署捜査本部に逮捕されたのは1991年12月。捜査員は当時、菅家さんとは別に「重要参考人」としてある男のマークを続けていたという。 「酷似している」と捜査員が訴えたのは、96年7月に群馬県太田市のパチンコ店で行方不明になった横山ゆかりちゃん(4)誘拐容疑事件に関与した疑いのある「店内の防犯ビデオに映った男」だ。失踪の1カ月後、映像の一部が一般公開される。 捜査員が声を落とした。「『あの男だ』と直感的に思った。でも、(菅家さんの逮捕で)足利事件は解決済みだと考えていたので、それ以上の関連を調べることもしなかった」 ■ ■ 90年5月に足利市の保育園児松田真実ちゃん(4)が殺害された足利事件。捜査本部は週末を借家で過ごすなどしていた菅家さんを同年12月から行動確認(尾行)する。菅家さんが出したごみの中から試料を採取し、警察庁科学警察研究所のDNA型鑑定結果と「自白」で逮捕に踏み切った。 捜査員は逮捕直前の状況をこう強調する。 「前科・前歴などから容疑性の高い『Aランク』と呼ばれていた男がまだ4、5人いた。ところが『DNA型鑑定の一致』で、アリバイなどもつぶし切れていないAランクの男の捜査はすべて打ち切りになった」。捜査員がマークした男はその1人だった。 足利事件の控訴審で元県警幹部は、尾行した人物は菅家さんだけだったと証言している。ところが実際は、菅家さん以外の「重要参考人」が数人おり、行動確認も続けていたというのだ。 「Aランクの男の血液型は全員(真犯人と同じ)B型だったと思う。しかし真犯人は1人。菅家さんのDNA型一致で(Aランクの捜査は)ストップにした」。捜査本部長だった森下昭雄・元県警刑事部長は捜査中止の経緯を率直に認めつつ、その中に真犯人がいた可能性に初めて言及した。 「結果的に菅家さんは真犯人じゃない。つぶし切れなかったAランクの中に、真犯人がいたということも否定できない」 ■ ■ 身長約158センチで、当時の推定年齢は30〜40代。サングラスをかけ、夏にもかかわらずジャンパーを羽織る。ゆかりちゃん事件で公開された14年前のビデオの男の特徴だ。 一方、足利事件で捜査員がマークした酷似の男はゆかりちゃん事件当時に40代だったとされる。 「足利事件のホシ(容疑者)だと確信していたから、捜査の打ち切りで悔しい思いをした。もちろん男は足利に土地勘はあったし、太田にも(一時住むなどの)足があった」 捜査員は数年前、ある事件捜査の過程で、かつて尾行したその男の名前を同僚からたまたま耳にしたという。 「群馬県内にいたらしい。が、その後の詳しい消息は分からない…」 [写真説明]未解決となった足利事件。捜査員が尾行を続けた重要参考人の1人は、横山ゆかりちゃん事件の「防犯ビデオの男」と酷似していたという(写真はゆかりちゃん事件の捜査本部がある群馬県警太田署の正面玄関) |
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