序章 アサバスカの真実
1974年7月6日カナダ、サスカチュアン州アサバスカにBETAユニット落着。
アメリカ合衆国大統領は直ちにBETA落着ユニットに、戦略核攻撃を命じた。
だが…。
「バカな、無傷だと!!」
唖然とする兵士、将軍、政府高官。
「ええい、再度攻撃だ。ありったけの核をぶち込め!」
大統領の獅子吼に、再度攻撃がなされた。
だが、再度無傷の威容を現すBETA落着ユニット。
「…」
さすがに、三度目の攻撃をためらう大統領。
その大統領に、更なる緊急報が届いた。
「ロスアラモスに巨大モンスター出現!」
「モンスターだと?」
いぶかる大統領。
「別の落着ユニットではないのか」
「いえ、巨大な、とにかく巨大なモンスターが突如出現したのです」
同時に2箇所で始まった危機。
大統領は、BETA落着ユニットに対しては新たな作戦を練る時間が必要と見て、新たに出現したモンスターの対処を優先することにした。
「よし、ロスアラモスを先に片付ける。モンスターとやらの詳しい情報が欲しい。せめて写真は無いのか?」
そこへタイミングよく、偵察機からの報告が入ってきた。
「映像出ます」
大統領たちの前にあるスクリーンにモンスターの姿が映し出された。
「オー」
その姿は一口に言って、モンスターとしか言いようのないものだった。
現生動物であえて例えるなら、それはイグアナに似ていた。
だが、イグアナとは比較にないほど巨大であり、だいいち直立歩行するイグアナなど聞いた事がない。
それよりも例えるにふさわしい対象があった。
「恐竜?まさか、生き残っていたのか」
実際、その姿は化石で知られる肉食恐竜に似ていた。
核実験を繰り返したロス砂漠に、生き残っていた恐竜がいて、放射能の影響で巨大化したというののだろうか?
バカな、と一笑に付したいところだが、目の前の現実がそれを許さない。
偵察機は執拗にそのモンスターの周囲を周回しているようで、モンスターはしきりに偵察機を気にしている。
ついにはその長大な尾を振り回して、偵察機を落とそうとし始めた。
もちろん偵察機はモンスターと十分な距離を取っており、その攻撃は届かない。
それをいいことに、挑発するように偵察機はモンスターにぎりぎりまで近づく事を繰り返し始めた。
ごつごつした黒い体表、首筋から尻尾まで続く大きな尾ひれの列、凶悪な鉤爪を持つ前脚。
そのモンスターが放つ禍々しさが次第に明らかになっていく。
偵察機が、モンスターの姿を正面から捉えた。
モンスターが、悔しげに咆哮…。
その瞬間、偵察機からの映像は途絶えた。
「なんだ、どうした?」
「故障か?」
室内がざわつき始めた時、映像が復活した。
それはどうやら別の偵察機からの映像のようで、画面の端の方にモンスターが位置し、別の端に何かの煙がたなびいていた。
その煙は、地上にある何かの残骸が盛んに燃え上がる炎から出ていた。
「まさか…」
その残骸が何なのか、誰も指摘したがらなかった。
州軍の戦車部隊が出動してきた。
旧式の装備だが、恐竜と推測できるモンスターには対抗できると思われた。
一斉に砲撃を集中する。
だが、モンスターはびくともしない。
ちんけな攻撃で俺を馬鹿にするのかと、大きな咆哮を発した。
いや、それは単なる咆哮ではなく、凶悪な威力を秘めた息吹だった。
モンスターの口から発された炎、そう、炎は戦車部隊をあっという間に包み込んだ。
そして、その炎が消えた後に残っていたのは…。
「オオ、ゴッド!!」
「ジーザス!」
「サノバビッチ!」
ドロドロにとけ去った戦車の残骸だった。
この時点で、大統領は州軍の撤退と、陸軍の出動を命じた。
そして、これ以後、このモンスターは「G」と呼称されるようになる。
Gと名づけられた存在は、なぜ自分がこの地にいるのか分らなかった。
だが、この地には敵がいる。
それも不倶戴天の敵だと、本能が告げていた。
Gは本能の導くままに、歩を進めた。
目指すは北、人間どもがアサバスカと呼ぶ地である。
次回予告。
ついに始まるBETAvs「G」。
「G」はアメリカ軍を蹴散らして、ひたすらアサバスカへと進む。
「G」の狙いは何か?
「G」はBETAに勝てるのか?
あとがき。
某雑談スレを見ていたらネタが浮かびました。
そのため新たなネタが浮かんだら、もしかしたら続きを書くかもしれません。