2010/11
 

授業料減免「維持」の大学が相次ぐ
 〜中部など地方大学で減免継続の動きが鮮明に〜



 留学生向けの授業料減免に対する国の学校法人援助が廃止される中、各私立大学の対応が注目されてきたが、ここにきて、従来実施してきた減免制度を2011年度以降も維持する方針を表明する大学が相次いでいる。優秀な留学生を獲得していく上で、減免制度を継続していくことが死活問題との受け止め方が広がっていることが背景にあるようだ。
 拓殖大学や駒沢女子大学では、後期の学費から減免分を差し引く形での授業料30減免を基本的に継続する方針を表明した。もともと減免分の学校法人援助が廃止されたのは、中国など留学生送り出し国の富裕化に伴うODA(政府開発援助)の供与廃止などが背景にあったが、駒沢女子大学では「実際に入学してくる留学生を見ると富裕化の恩恵にあずかっていない学生が多く、日本語学校関係者からもまだ経済的に厳しい境遇にある留学生が多いと聞いている(入試センター関係者)」として「真摯に勉学に励んでいる留学生については引き続き応援し続ける必要があると判断した(同)」という。
 またフェリス女学院大学や山村学園短期大学のように、成績等による選考や特例措置により、最大で50%の授業料減免を実施する大学もある。
 一方で首都圏内には減免廃止に踏み切る大学や、入学年次だけの学費減免にとどめる大学もある。いずれも「背に腹は代えられない財政事情(関係者)」を理由とする大学が中心だが、首都圏のブランド校とされる著名私大の中には「減免をやめても留学生の応募者は減らない」と強気の姿勢を貫くところもあり、今後減免制度を廃止縮小した大学への留学生の志願者動向に変化があるかどうかに注目が集まる。

 地方大学においては、首都圏以上に「減免維持」の流れが鮮明になりつつあるようだ。中部地区では南山大学、中部大学、椙山女学園大学などの有力校が留学生授業料50%減免を継続する方針を表明。同40%減免を維持する岐阜経済大学では入学金も同率免除する。関西では長浜バイオ大学が授業料50%分に加え入学金を全額免除する方針を明らかにしている。さらに北関東地区の関東学園大学では「卒業まで授業料半額免除」を謳い、尚美学園大学も「4年次まで毎年30%の授業料減免」を打ち出している。徳島工業短期大学にように「日本語学校の出席率90%以上」を条件に、授業70%減免実施を継続する大学もある。
 現在、留学生向けに最大で60%減免(全留学生に30%減免)を実施中で、来年度以降の制度維持を決めた聖学院大学の山下研一広報企画部長は、「授業料減免を維持すると大学の持ち出し(負担)が増える」とする減免継続への反対意見について「完全な誤解だ。そもそも大学は留学生を受け入れることにより相応の学費が徴収できるだけでなく、彼らと接する日本人の若者に異文化理解を育むことも出来る」とした上で、聖学院大学では「学内で留学生受け入れの成果を具体的な数字によって示すことで、
経営的にも大きく貢献しているという理解を得ることが出来た」と述べている。