2010/4
 

鳩山政権、留学生関連事業を相次ぎ「仕分け」対象に

 〜学習奨励費や日本語能力試験もリストアップ〜


 

 鳩山連立政権が、留学生受入れや日本語教育を担っている独立行政法人及び財団法人に対して、相次ぎ事業見直しを求める姿勢を鮮明にしている。4月下旬に実施される「事業仕分け第2弾」を前に、同党若手議員によって行われた仕分けの事前調査では、日本語学校の認可機関である(財)日本語教育振興協会(通称:日振協)に対し、公務員の天下り実態などについて聞き取り調査を実施。本稿締切目前(420日)に発表された「仕分け」第2弾の対象には、(独)日本学生支援機構をリストアップ。事業対象としては、私費留学生向け学習奨励費など留学生関連の3事業が入った。外務省関連では2000年代初頭まで長年、留学希望者の日本語力を計る指標として使われてきた日本語能力試験(国際交流基金)も仕分け対象に含まれている。

 

◆学習奨励費制度は見直し不可避の流れ

 留学生関連事業の中で「仕分け」入りの影響が特に大きいとみられるのは、私費外国人留学生等学習奨励費制度だ。『留学生新聞』が文部科学省筋から独自に得た情報によると、2010年度予算では793668万円が予算化されており、受給対象者数は大学院生3470名(月額65千円)、大学学部生・専門学校生8380名(月額48千円)、日本語学校生700名(月額48千円)の合計12550名。留学生向けの経済支援措置の中では、長年実施されてきた授業料減免学校法人援助(大学向け)と並ぶ2本柱で、海外から来日する外国人学生の経済的支柱となってきた。

 その中でも、授業料減免学校法人援助については今年度からストップされることが、先月文部科学省より各大学へ通知されたばかりで、今後の仕分けにより学習奨励費制度も廃止に追い込まれるような事態になれば、「30万人計画」達成を目指す留学生受入れ事業自体に大きなマイナス材料となることは避けられそうにない。

 ただ文部科学省が公表した学習奨励費予算の内訳では、大学学部生と専門学校生の内訳が未定のまま「最終的には各校からの推薦に基づいて対象人数を決めていく(同省関係筋)」仕組みとなっており、「仕分けの際に徹底的に追及されると丼勘定との印象は拭えず、文科省は脇が甘すぎる(大学関係者)」との指摘も出ており、今後の展開は予断を許さない状況だ。

 今回の仕分け作業では、他に(1)国際交流会館等留学生寄宿舎等の設置・運営(2)留学情報センターの運営、の2事業も対象に入っており、民主党政権の切り札とされる事業仕分けによって留学生予算にも大なたが振るわれる可能性が出てきた。

 (独)日本学生支援機構では今回の仕分け対象に同機構の留学生関連事業が3つ入ったことについて、『留学生新聞』の取材に対し「今は(仕分け本番を控えた)微妙な時期なのでコメントは一切差し控えたい」としている。

 

◆日本語学校の認可法人を事前調査

 政府・民主党による「事業仕分け第2弾」開始を前に、民主党若手議員による事前調査が4月上旬行われた。議員らは文部科学省らが所管する(財)日本語教育振興協会(日振協)を訪問し、財団の現状について聞き取り調査を行った。

 日振協は全国の日本語学校を束ねる期間で、その設立申請の受付や認可、設置基準づくりなどを一手に担っている財団。特に外国人学生を受入れている大学や専門学校関係者の間では馴染みが深い団体だ。

 同事務所を訪れた仕分け調査員らは理事長らに財団の現状について質問し、(1)加盟校から徴収している加盟金30万円と年会費18万円(=基本額。学生数によりさらに加算)に妥当性があるかどうか(2)文部科学省や法務省入管から天下っている理事等の給与・待遇はどうなっているか、等について聞き取りを行った。(1)について財団幹部は「妥当なもの」と語り、(2)に関して追及の矢面に立たされたある理事は自らの勤務条件が週2回出勤であるにもかかわらず「実際にはもっと出社している」などと釈明した。

 日振協を巡っては、会計検査院の調査により、営利を目的としない財団であるにもかかわらず、余剰金である内部留保が年間支出の15倍に上るなど、国が定めた基準値(0.3倍)の5倍に達していることが有力紙で報じられていた。また日本語学校の認可事業への補助として長年に渡り国から多額の補助金を受け取ると同時に、新たに学校を立ち上げる全ての加盟校からも加盟金を徴収するなど文字通りの「二重取り」状態になっていたことに対し批判の声があった。国から同協会に数千万円拠出されていた補助金は、すでに民主党政権によってほぼ全額カットされている状態だという。

 一方で「日振協の件は問題ではあるが、予算規模からみて氷山の一角であり理事長の給与も、すでに仕分け対象となった他の天下り財団に比べれば適正水準(関係者)」と擁護する声も業界内にはある。むしろ「年度末に余った予算を消化するために必要性の薄い会議を招集している(大学関係者)」という指摘が出ていた文部科学省系の独立行政法人や、前回仕分け時にも焦点となった科学技術予算の圧縮に戦々恐々とする同様の法人などが、今後の仕分けの「本丸」になるのではと見る向きもある。

 

◆日本語能力試験も対象に

 政府の行政刷新会議が発表した「事業仕分け第2弾」の対象となる47独立行政法人151事業の中には、他に大学入試センタ-の「センタ-試験の実施」事業が入ったほか、外務省管轄の国際交流基金が実施している「日本語能力試験」も含まれることが判明した。同試験については、(独)日本学生支援機構が実施している「日本留学試験」との重複に疑問を呈する声が国内外から出ていた。