「司令塔は船のブリッジ。最近の船は戦闘指揮所があって、(艦船の頭脳は)指揮所に移っている」。7日の記者会見で「経済の司令塔」としての役割を問われた海江田万里経済財政担当相。軍艦の構造変化を引き合いに出し、「あんまり司令塔にこだわらなくてもいいんじゃないか」と、記者団をけむに巻いた。
海江田氏の閣内での存在感は今ひとつ。昨年の予算編成の際は、関係閣僚による会合に当初、招集すらされなかった。代わりに予算や新成長戦略作りで中心的役割を果たしたのが、玄葉光一郎国家戦略担当相。昨年10月の衆院予算委員会で野党議員から「司令塔は海江田氏なのか、玄葉氏なのか」と問われた菅直人首相は「基本的には国家戦略相」。官僚からは「経財相の役割が、経済指標の取りまとめぐらいになってしまう」との声も上がっている。
司令塔から降りた格好の海江田氏だが、持論の「国有資産証券化」を研究する検討会を10月、内閣府に新設。年明けにはシンガポールを訪問し、同国の閣僚と成長戦略について意見を交わした。雌伏の時を精力的に過ごしながら、日本経済の「指揮」を執る日をうかがっている。【高橋昌紀】
毎日新聞 2011年1月12日 東京朝刊