たちあがれ日本の与謝野馨共同代表(72)は13日、同党に離党届を提出し、受理された。菅直人首相は14日の内閣改造で与謝野氏を税と社会保障担当を兼務する経済財政担当相で処遇し、改造の目玉としてアピールしたい考え。与謝野氏も13日の記者会見で「政治生活のすべてをかけて、日本の将来のためにいい仕事をしたい」と政権参加に意欲を表明した。しかし、野党各党は与謝野氏の動きに冷ややかで、与野党のパイプ役として、首相の期待通り機能するかは不透明だ。【中田卓二、野原大輔】
与謝野氏は会見で「私は政策に現実性を与えるために仕事をしてきた」と説明した。たちあがれは与謝野氏を含めても所属議員6人の小所帯。しかも野党では税制抜本改革など目指す政策の実現はおぼつかない。そんな危機感が離党という決断につながった。
与謝野氏はたちあがれ内で連立入りを模索してきたが、同党は昨年12月27日、連立不参加を決定。それ以来、盟友の園田博之幹事長ですら与謝野氏と携帯電話で連絡がとれなくなった。同党幹部は「連立が破談になった時点で、1人で政権入りする意思を固めていたのだろう」と語る。
与謝野氏は自民党時代、官房長官、財務・金融・経済財政担当相などを歴任した。「働き場所」を求めた与謝野氏に対し、首相側にも政策通の同氏を「一本釣り」することで、内閣改造の意義を高め、政権の重みを増したいという思惑がある。
民主党内は消費税増税で意見が分かれ、税制改正論議の難航は必至。仙谷由人官房長官は13日の会見で「ベテランに助っ人としてご協力いただけるのは大変ありがたい」と最大級の賛辞を送った。
首相は税制と社会保障制度の抜本改革に向けて、与謝野氏を担当相に据え与野党協議を進めたい意向。しかし、たちあがれの平沼赳夫代表は13日、「彼の力で民主党政権を立て直すことができるかどうか。私は無理だと思う」と突き放し、首相の思惑は空回りしている。
ほかの野党はさらに辛辣(しんらつ)だ。自民党の谷垣禎一総裁は会見で「政治家としての行動、出処進退に対する考え方が私どもと違う」と批判。与謝野氏は昨年4月、谷垣氏の党運営を批判して自民党を飛び出した経緯もあり、谷垣氏は「言語道断だ」と、周辺に怒りをあらわにしたという。
自民党内では「与謝野氏は次期衆院選か参院選に民主党から出るのではないか」との臆測も消えない。同党幹部は「(09年衆院選で当選した)自民党の議席を持って、民主党政権に行くような人だ」と不快感を表明。公明党幹部も「自民党を除名された人が接着剤にはならない」と断言した。
毎日新聞 2011年1月14日 東京朝刊