菅首相アップアップ改造、与謝野氏が入閣へ

民主党大会で談笑する菅首相と岡田幹事長

離党して菅内閣に協力することを明言した与謝野氏

　菅直人首相（６４）は１３日、たちあがれ日本の与謝野馨共同代表（７２）を経済財政相で起用する方針を固めた。打倒・民主党を掲げてきた与謝野氏は、同日に離党届を提出、財政再建への協力へ意欲をみせた。さらに、１４日の内閣改造・党役員人事では、仙谷由人官房長官（６４）を党代表代行に就け、新長官に枝野幸男幹事長代理（４６）を起用することを内定。相変わらずの「脱・小沢」人事に、この日、千葉市内で開かれた定期党大会では「親小沢」から不満が爆発した。

　菅首相が内閣の救世主と期待したのは、７２歳の与謝野氏だった。

　与謝野氏は午前１０時すぎ、たちあがれ日本の平沼赳夫代表に離党届を提出。離党の決断は約１週間前、理由は「たちあがれ日本は理念の政党。私みたいに実務的に動く政治家とは、どこか違うところがある」と述べた。

　昨年１月には著作「民主党が日本経済を破壊する」で政権をめった斬り。２月には当時の鳩山由紀夫首相を「平成の脱税王」と批判、参院選では反民主を掲げて戦った。矛盾では？との報道陣からの問いに「私は『打倒・民主』という言葉を使った覚えはない」と言い切った。

　昨年１１月以降、囲碁仲間の菅首相と２回にわたり会談し、政権への協力を模索していた。昨年４月の自民党離党に続く離党に、批判が飛ぶのは必至だが「税制抜本改革、社会保障、ＴＰＰ（環太平洋パートナーシップ協定）で、できることは（政権を）お手伝いしたい」と強気。この日深夜、経済財政担当相への就任が内定した。今後は無所属で活動する。

　財務相経験もあり、政界随一の政策通の政権入りに菅首相は「財政の健全化や社会保障などに取り組まれており、民主党とは大きな流れでかなり共通性は高いと認識している」と歓迎。消費税率引き上げに向けた税・財政改革に期待している。

　首相は与謝野氏以外にも、ねじれ国会を乗り切るため、手を打った。参院で問責が可決され、野党が国会審議に応じる条件とした仙谷官房長官、馬淵澄夫国交相（５０）を交代。菅首相は改造について、党大会で「問責が出されたからではない。日本の改革を推し進める最強の態勢をつくる」と息巻いたが、仙谷氏は党代表代行ポストが有力だ。

　後任の官房長官は「反小沢」の急先鋒（せんぽう）である枝野氏が内定した。当初は、税制抜本改革の分野に深く精通した藤井裕久元財務相（７８）起用を模索。首相は今月６日、仙谷氏自身を藤井氏のもとに派遣、就任を打診したが固辞され、菅首相や仙谷氏の信頼も厚い枝野氏に落ち着いた。

　結局、官房長官職と党幹部職をチェンジしただけで、ある議員は「人材不足に悩む民主党の“たらいまわし人事”だ」とチクリ。０６年に咽頭がんの手術をし、高齢の与謝野氏の健康面を不安視する声もある。党大会で菅首相が掲げた「日本の改革を推し進める最強の態勢」は、果たして実現するのだろうか。

（2011年1月14日06時03分スポーツ報知）