【東京】菅直人首相は14日、自由貿易支持派と財政保守派を擁する改造内閣を発足させた。内閣改造は、低迷する支持率の押し上げと野党の懐柔が目的だ。
菅氏は野田佳彦氏を財務相に留めた一方、自民党出身のベテラン政治家、与謝野馨氏を経済財政担当相に起用した。これまで経済財政担当相を務めていた海江田万里氏については、経済産業相に横滑りさせた。
経験豊かな政治家により構成されたこの経済チームは、米国が主導する環太平洋経済連携協定(TPP)への参加に向けた菅氏の意気込みを示すものだ。日本の大手輸出企業がTPPへの参加を強力に支持する一方、伝統的な農業ロビー団体はこれに反対している。
この経済チームは、民主党の政権獲得の一助となった大衆迎合的なばらまき政策からの脱却も示唆している。菅氏は、増大する公的債務に対処するため、増税を模索している。
野村証券のシニア政治アナリスト、川崎研一氏は「キーワードは増税とTPPだ。意義的には野党対応の改造内閣だったが、そうすることによって少なくとも強化体制を敷けた」と述べた。
野田氏は10人の留任組の1人だ。与党が参院で過半数を持たない「ねじれ国会」で、2011年度予算案の成立に向けて険しい道のりが見込まれるなか、菅氏が信頼感を維持するには予算案の中心的立案者である野田氏の留任が必要だったと政治評論家はみている。
前日まで野党のメンバーだった与謝野氏の起用は予想外だった。増え続ける社会保障コストに対処するため、現在5%の消費税を2倍にする必要があると説く与謝野氏は13日、6人の国会議員で構成される政党「たちあがれ日本」を離れた。与謝野氏は社会保障・税の一体改革なども担当する。
72歳の与謝野氏は、自民党政権時代に経済関連の閣僚ポストを歴任しており、経済通として知られる。野村証券の川崎氏は「党を渡り歩いているという批判も出るかもしれないが、逆に言えば超党派で動けるという強みにもなる」との見方を示した。