菅直人首相が内閣改造を模索し始めたのは50日前だった。2010年度補正予算が成立した昨年11月26日、参院本会議で政権の屋台骨である仙谷由人前官房長官の問責決議が可決。野党と党内の小沢一郎元代表の支持勢力の両面から仙谷氏の辞任を突き付けられた。強行突破を唱えた仙谷氏と首相との間には溝も生まれた。
「税と社会保障、環太平洋経済連携協定(TPP)、日米同盟の強化を旗に掲げて歴史を相手に勝負すべきだ」。昨年12月4日、都内の高級ホテルで首相がひそかに向き合ったたちあがれ日本の与謝野馨共同代表は、こうささやいた。
たちあがれ日本との連立模索は、参院での過半数確保を断念し、窮地に陥った首相が衆院で再可決可能な「3分の2」勢力確保に向けて動いた戦略変更の一環だった。仙谷氏の辞任が政権に与える影響が甚大だとみた首相は「3分の2を得れば、仙谷氏を代えなくても国会を乗り切れるかもしれない」と考えた。
だが、その戦略は党内から崩される。
「地方の反乱が起こる」。小沢氏は自らを支持する議員らを連夜集め、地方選の連敗などを理由に政権批判を繰り返した。標的は「反小沢」の急先鋒(せんぽう)である仙谷氏。小沢氏に近い参院幹部からは仙谷氏の辞任要求が公然とあがった。小沢系議員の造反があれば「3分の2」は揺らぐ。
「野党が参院の問責を理由に審議拒否を正当化するなら衆院で信任決議を出せばいい」。年の瀬の12月29日。首相は公邸に集めた自らを支える議員グループとの懇談で久々に強気の姿勢をみせた。だが、言葉とは裏腹に、首相は既に仙谷氏の「辞任カード」を切るタイミングを探っていた。
強行突破路線を主導したのは仙谷氏自身と官房長官に就任した枝野幸男氏だった。しかし、「法的拘束力のない問責決議を受け、ひとたび野党の辞任要求に屈すれば政権が立ちゆかなくなる」との仙谷氏の思いは首相とはずれていった。
1月5日、都内の高級レストランの個室。首相と岡田克也幹事長、仙谷氏の3人がテーブルを囲んだ。民主党幹部はこの席で岡田氏が「このままでは国会が持たない」と仙谷氏の交代論を主張したとみる。
「強行突破路線は駄目だ。公明党がいつ審議に応じるか不透明すぎる。仙谷さんはいろんなことを助けてくれるし、何をやってもできる人だ」。1月8日、首相は仙谷氏の交代を宣言すると、地ならしを始めた。
首相は小沢氏と連携する鳩山由紀夫前首相と連絡を取ったという。12日に自ら設定した両院議員総会で約1時間半、執行部批判に耳を傾けた。両院総会と13日の党大会は首相退陣論で混乱することもなく終了した。
首相は仙谷氏に一時、代表代行と国会対策委員長の兼務を打診したが、仙谷氏は「兼務はやめたほうがいい。中途半端になる」と断った。「問責を出されたからではなく、改革を進めるための新たな態勢づくり」と首相が語った今回の改造。鳩山グループの海江田万里、大畠章宏両氏は閣内に残留。小沢グループからの入閣はゼロだった。
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