社説
菅再改造内閣/これがラストチャンスだ
目的のためには手段を選ばずか。政権を取り巻く切羽詰まった状況を考えれば、背に腹は代えられなかったというのが本当のところかもしれない。 菅直人首相がきのう、内閣再改造・党役員人事を行った。「有言実行内閣」と銘打った改造からわずか4カ月で、仕切り直しを余儀なくされた。 「ねじれ国会」を乗り切る成算があるわけではない。小沢一郎民主党元代表の国会招致も流動的だ。党内からは不協和音も聞こえてくる。 先が見通せない中、一つだけはっきりしていることがある。それは新体制がつまずけば、今度こそ解散・総選挙に直結するであろうことだ。薄氷を踏むがごとしの多難な船出である。 人事の肝はまず、24日に召集される通常国会をスムーズに運ぶため、野党側に譲歩したことだ。参院で問責決議を受けた仙谷由人官房長官と馬淵澄夫国土交通相を交代させた。 首相は内閣の要である仙谷氏の続投にこだわったが、野党の審議拒否の壁を突き崩す当てはなかった。民主党出身の西岡武夫参院議長までもが仙谷氏の更迭を求めたことで、苦渋の決断に追い込まれた。 2011年度予算案は参院で否決されても憲法の衆院優越の規定によって成立するが、予算執行に必要な関連法案は衆院で3分の2以上の賛成で再可決できなければ廃案となる。 3分の2以上の議席を持たないため、年度内成立に赤信号がともる。首相は政権批判の度合いが自民党に比べれば穏健な公明党との連携などを念頭に、仙谷氏の首を差し出すことで「3月危機」回避の布石を打った。 仙谷氏の後任に枝野幸男党幹事長代理を充てたことは、引き続き「脱小沢」路線を堅持するメッセージと読み取っていいだろう。ただ、小沢氏の衆院政治倫理審査会への招致が実現するかどうかは不透明で、小沢問題は依然として政権の重荷であり続ける。 サプライズ人事は、たちあがれ日本を離党した与謝野馨元財務相を経済財政担当相に起用したことだ。税制と社会保障改革に関する超党派協議の必要性を訴えている首相が、自民党にも籍を置いた与謝野氏をこのテーマのキーマンとして想定していることは明らかだ。 とはいえ、党内からも批判が続出する菅政権の前途は険しい。中国漁船衝突事件など外交の失態で内閣支持率は低迷を続ける。共同通信社の世論調査では、子ども手当などの看板政策にも理解が広がらず、マニフェスト(政権公約)の見直しが避けられそうにない。 安定財源を欠いたまま、国民受けの良さそうな政策をパッチワークのように寄せ集めても共感は得られない。新内閣が目指すべきは予算の年度内成立という当面の大事に精力を注ぐ一方、この国の見取り図を大胆に描いてみせることだ。 政権交代から1年半。さすがに野党ぼけは払拭(ふっしょく)されたようだが、民主党の「寄せ集め感」は相変わらずだ。菅首相のリーダーシップが問われている。
2011年01月15日土曜日
|
|