政権の優先課題を税制・社会保障の一体改革と、TPP締結に明確に絞り、必要な人材を配置した。いずれも日本にとって待ったなしの課題であり、まずは評価したい。
与謝野馨氏は自民党時代、消費税を含む税制抜本改革を法律に明記させた。その人物を引き抜いて推進役に据えたことは、政権の意欲を示すものだろう。ただ、改革の実行には国民の理解が必須だ。民主党政権が考える社会保障政策とそのコストを示し、何を優先するのか明確にしたプランを早期に示してほしい。
TPPについては、推進論者の海江田万里氏を経産相に配置した。農林水産省が地方議員を抱き込んで強く抵抗することは確実で、その抵抗を排して前進するには旗振り役が必要。どの閣僚、省庁に旗振り役を任せるかがポイントになる。バラマキでなく、真に農業の競争力強化を図るための政策も不可欠だ。
これらの実現には、野党のみならず、小沢一郎元代表のグループなど、党内の強い抵抗も乗り越える必要がある。長年の課題であった法人税減税も首相の判断で前進した。菅直人首相は強いリーダーシップを示し、成果を上げてほしい。
毎日新聞 2011年1月15日 東京朝刊