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菅再改造内閣 野党の攻勢かわせるか '11/1/15

 「逆転打」を目指した布陣なのだろうか。菅直人首相はきのう、2度目の内閣改造と民主党役員人事に踏み切った。政権発足から半年余り。実態は通常国会を前に野党に追い込まれた再改造といわれても仕方あるまい。

 新閣僚の顔ぶれを見ると、首相を除く17人の中で新任は6人。うち2人は横滑りだ。小幅な手直しにとどまった。

 組閣には二つのポイントが見ててとれる。今月下旬に始まる通常国会の乗り切りと、社会保障改革などの政策実現である。

 焦点は参院で問責決議を受けた仙谷由人前官房長官の処遇だった。ねじれ国会の鍵を握る公明党が更迭を求め、国会の開会すらおぼつかない状況になっていた。

 首相は同じく問責決議を受けた馬淵澄夫前国土交通相とともに退任させた。結果として野党の要求を受け入れた形だ。

 年頭会見で首相が挙げた重要政策は税制・社会保障の一体改革と環太平洋連携協定(TPP)への対応である。どちらも6月ごろに方向性を示すとした。

 たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏を経済財政担当相に充てたのは、税・社会保障改革に主眼を置いた人事にほかなるまい。首相と同じ財政再建論者で官僚も一目置くとされる。

 とはいえ自民党政権最後の財務相である。政権交代後も民主党批判を繰り返していただけに、違和感を覚える。超党派で議論する際のパイプ役も期待されているのだろうが、力を発揮できるかは未知数と言わざるを得ない。

 同じ小選挙区でつばぜり合いを演じてきた海江田万里氏は経済産業相に回り、TPPへの対応を担う。因縁の2人がスムーズに連携できなければ、起用の狙いは裏目に出よう。

 「脱小沢」をより鮮明にしたのも特徴だ。小沢一郎元代表に批判的だった仙谷氏を党代表代行で処遇。後任の官房長官には枝野幸男氏を充てた。岡田克也党幹事長も留任させた。政権浮揚のてこにしたいとの思惑が、党内政局を激化させる恐れもある。賭けに出た感は否めない。

 相次いだ閣僚の失言などに懲りたのか、今回はべテランの起用も目立つ。与謝野氏に加え、法相に江田五月前参院議長、国家公安委員長に中野寛成元衆院副議長が就任。藤井裕久元財務相も官房副長官として政権入りした。党内の人材不足を指摘する声もある。

 これでねじれ国会をどう乗り切るのか。予算関連法案の成立には野党の協力が不可欠。暗礁に乗り上げれば政権は危機に陥る。

 野党は対決姿勢を強めている。ただ問責決議を乱発して閣僚の辞任を迫るようなやり方は、国民の反発を買うだけだろう。政策本位の論議を求めたい。

 改造後の会見で首相は「最も強力な態勢を考えた」と自賛した。予算案と関連法案を年度内に成立させることができなければ、首相の責任は免れまい。言葉でなく実行力が問われている。




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