菅直人首相が昨年9月に続いて内閣改造を実施した。新たな入閣を4人にとどめた小幅な改造だが、なぜ今なのか、国民にはっきり見えてこない。
「小沢切り」の姿勢を強めることで、内閣支持率回復、政権浮揚を狙ったといわれるが、今後の国会運営をにらんで、参院で問責決議された仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国土交通大臣を野党の要求に屈して交代させたにすぎない。「その場しのぎ」の感は否めない。同じ顔触れが担当を代えているだけの横滑りで、新味にも乏しい。
理解しがたい人事
改造の目玉は、たちあがれ日本を離党した与謝野馨氏の経済財政担当相起用だ。財政再建を目指す姿勢を強調するための入閣だろう。
与謝野氏の入閣は疑問だ。2009年の衆院選東京1区で民主党の海江田万里氏と戦い、敗れている。だが当時、自民党所属だった同氏は比例代表で復活当選を果たしている。
選挙ではそれぞれが民主、自民の政策を有権者に示し戦った。その違いを有権者が判断して投票し、当落が決まったはずだ。
選挙に負けた与謝野氏を経済財政担当相に起用し、勝った海江田氏を経済産業相に横滑りさせるとは理解しがたい。
与謝野氏は政策通として知られているが、増税路線派でもある。
10年の参院選前に結成されたたちあがれ日本の中心メンバーであり、選挙では「12年度から消費税率3%引き上げ」をはっきり公約に掲げていた。
民主党は09年衆院選のマニフェスト(政権公約)で、消費税については4年間上げないとしていた。
与謝野氏を入閣させたのは、菅内閣が消費税増税など増税路線へ転換することを意味する。またも公約違反の腹づもりだ。
首相自ら「最強の態勢」と胸を張っているが、沖縄には「最強」の表現が空疎に響く。
先日、沖縄訪問を終えたばかりの馬淵沖縄担当相は閣外に去り、新たに官房長官になった枝野幸男氏が沖縄担当を兼務することになった。
その枝野氏と沖縄の縁は薄い。そればかりか、最近は沖縄への思いのなさ、誠意のなさが表出している。
昨年11月に稲嶺進名護市長らが上京し、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設撤回を政府に求めようとした際、関係省の政務三役との面談ができなかった。
この時「政府方針に一致しないので会わない」「政治パフォーマンスには応じられない」と指示し、事実上、門前払いしたのが枝野氏だ。
政府、自らに異論を持つ者は排除しても構わないという姿勢の枝野氏の沖縄担当起用は「小沢切り」とともに、菅内閣の「沖縄切り」の表れかとさえ思える。
「政治主導」を返上
普天間問題で「県外移設」との県民の圧倒的な声には耳を全く傾けず、移設先を名護市辺野古とする日米合意の確実な履行を繰り返す北沢俊美防衛相は留任した。前原誠司外相も同じだ。
北沢防衛相は政権交代以降、唯一、同じ閣僚の椅子に座り続けている。防衛省内からは「政権のご意見番」とも評価され、「日米同盟の深化に尽力してほしい」と期待されているほどだ。
いかに沖縄の声ではなく、省内の意見を重要視していたかが分かる。官僚たちの思いのままに使われている証拠だ。
「官僚丸投げの政治から、政権党が責任を持つ政治家主導の政治へ」を掲げ、政権を獲得した民主党だが、いまやそのスローガンはむなしい。
与謝野氏の入閣は、危機的財政を解決するには消費税増税しかないと主張する財務官僚の意向に添うものだ。
普天間問題についても、県民の声を無視し、官僚のシナリオだけを頼りにしている閣僚ばかりだ。これでは官僚にとって扱いやすい「最強の内閣」にすぎない。
民主党が政権を獲得できたのは「子ども手当」「県外移設」など公約の実現を約束したからだ。
それを守れず、次々と公約を覆したから、民の心が離れてしまったのだ。「主」は「官」ではなく「民」であることを忘れてはなるまい。
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