2011年1月15日(土)「しんぶん赤旗」
改造内閣 “最強布陣”何めざす
笑う財界・米国 泣くのは…
菅直人首相が14日に実施した内閣改造。首相自身が「改革に向けて最強の体制をつくる」との掛け声で行ったものですが、その顔ぶれからは、国民にとってではなく、財界・アメリカの利益実現にとって「最強」である実態が明らかになっています。
消費税
強固な増税派を中枢に
菅首相は、自公政権で消費税増税へ布石を打った与謝野馨氏を「民主党とかなり共通性は高い」と重要閣僚に迎え、日本経団連と民主党との橋渡しを務める枝野幸男氏を官房長官にすえることで、財界要求に応える消費税増税の“決意”を示しました。
与謝野氏は2009年、麻生内閣の財務・金融・経済財政相として税制関連法の付則に11年度までに消費税増税へ「必要な法制上の措置を講ずる」と明記させ、「立法府の意思となったのである。つまり、民主党政権も、この法律に縛られているということだ」(同氏の著書『民主党が日本経済を破壊する』)と迫っていました。
自民党離党後、与謝野氏は「たちあがれ日本」共同代表として「消費税率の引き上げなしに財政再建が可能であるとの幻想を振りまくのは、無責任極まりない」(『文芸春秋』10年5月号)と民主党を挑発。「社会保障という呪文を唱えるだけで国民が負担増を許してくれると考えるのは、大いに甘い」(前掲書)と、「安心社会実現」の名のもとに消費税増税への執念をむき出しにしてきました。
一方、枝野氏は昨年6月の幹事長就任の際、「政権交代」後に途絶えていた日本経団連と民主党との公式対話をいち早く再開。参院選の結果が出た翌日(7月12日)のテレビ番組で消費税増税への与野党協議について「議論ができる土壌をつくりたい」と述べていました。
菅首相をはじめ、与謝野、枝野両氏も国政選挙で示された民意を顧みない点で共通しています。
TPP
推進派で固める
菅首相は今回の内閣改造で、日本の農業を破壊し、社会そのものを根本から変質させる環太平洋連携協定(TPP)への参加を国民に強要するための布陣を組みました。
そのあらわれの一つが、経済産業相にTPP積極派の海江田万里前経済財政相をスライドさせたことです。海江田氏はかねてから「早い段階で参加の意思を示さなければならない。もう差し迫っている」(昨年10月の会見)などと閣内でも最も強硬な姿勢を示してきた1人です。
菅首相は年明けの4日、6月をめどに交渉参加の「最終判断」を行う考えを示し、5日の閣議でも「平成の開国」に取り組むよう指示。しかし、前任の経産相の大畠章宏氏はその直後の会見で、「国民の理解と協力がなければ、前に進むことはできない。6月か秋かは状況による」と“一歩引いた”発言を行っていました。
今回の改造ではこの大畠氏を国土交通相にスライドさせ、よりはっきりと推進の立場に立つ海江田氏を担当大臣に就けたのです。
海江田氏の後任でもある与謝野馨・経済財政・社会保障・税一体改革担当相も、菅内閣を「(消費税増税と)TPPでお手伝いしたい」(13日の会見)と、たちあがれ日本を離党した人物です。
留任した前原誠司外相も7日、TPP参加を「日米関係強化の一環」と位置付けると講演し、「困難を伴うことは事実」としながらも強力に推進していく姿勢を表明しています。
財界の要求そのままに国民にTPPを押し付ける体制を強化した菅内閣は、同時にアメリカいいなりでもあることを示しています。
米軍新基地
外務・防衛留任させ同盟深化
外交・防衛関係では、前原外相、北沢俊美防衛相がともに留任。沖縄・米軍普天間基地の「移設」をにらみ、春に予定されている菅首相の訪米と「日米共同ビジョン」の発表、それに向けた「共通戦略目標」の見直し・策定など、さらなる「同盟深化」路線を突き進む布陣です。
前原外相は正月明け早々に訪米し、クリントン国務長官と会談。両者は、「共通戦略目標」の見直し・再確認作業を進め、アジア地域における「周辺事態」の対応について自衛隊・米軍の軍事協力のための協議を加速させることで一致しました。
来日したゲーツ米国防長官との13日の会談でも、アメリカいいなりの姿勢が浮き彫りになりました。
この会談で前原外相、北沢防衛相は、沖縄県名護市辺野古での新基地建設推進をうたった「日米合意」の履行堅持を表明。菅首相も、ゲーツ長官との会談で「昨年5月の日米合意に沿って進めていく方針には変わりがない」と改めて確約しました。
前原外相は昨年12月、沖縄を訪問し、辺野古「移設」が進まなければ普天間基地が継続使用されるという脅しまでかけました。
また、北沢防衛相は、昨年12月の「新防衛大綱」で、自衛隊の役割を「動的防衛力」に変質させた中心人物です。武器輸出を全面禁止する武器輸出三原則の形骸化も進め、13日のゲーツ長官との会談では、日米共同開発中の迎撃ミサイルの第三国への供与について、「本年度中をめどに結論を出す」と約束しました。