HOMEコラム|特集|連載社説
アクリートくらぶガイドアクリートくらぶログイン
子規の一日一句愛媛の天気Yahoo!

特集社説2011年01月09日(日)付 愛媛新聞

別姓求め提訴へ まず国会が責任持ち議論を

 結婚の際に夫と妻のいずれかが改姓しなくてはならない現行の民法規定は違憲だとする国賠訴訟が、2月にも東京地裁に提訴される。
 原告は夫婦別姓を望む男女5人。民法の同姓規定(750条)は、個人の尊重を定めた憲法13条や「夫婦は同等の権利を有する」と定めた憲法24条に違反するとの主張だ。
 別姓を望む声は1970〜80年代に高まり、96年には法制審議会が「選択的夫婦別姓制度」導入を盛り込んだ民法改正要綱をまとめた。が、対立意見が根強く国会での議論は停滞。野党時代に何度も改正案を提出していた民主党に政権交代してからも、連立を組む国民新党の反対を受け閣議決定すら見送られた。
 原告は、結婚後も使い慣れた姓を名乗りたいとの願いを何度も打ちのめされてきた。70代女性は、せめて「死ぬときは本名(旧姓)で」と離婚届を準備したという。精神的苦痛に耐えてきた末の、覚悟の提訴であろう。
 長年の懸案を放置してきたのは国会の怠慢である。世論喚起に期待を込める原告らの声を真摯(しんし)に受け止め、民法改正法案の審議に正面から取り組むべきだ。
 現行でも夫か妻かいずれかの姓を選べる点では「平等」ではあるが、96%が男性の姓を選択しているのが実情。女性側の改姓を当然視する価値観が依然、存在する。
 仕事上などで旧姓を使い続けるための「通称」使用に対しては、社会的な理解が進んできてはいる。ただ、身分証明に必要な公的文書には戸籍名使用が原則とされるなど、別姓の代替策にはなり得ていない。
 同姓規定は国際的にも差別的と受け止められている。日本が国連女性差別撤廃条約を尊重せず対策を放置しているとして昨年、女性差別撤廃委員会が「遺憾」を表明した。
 導入を阻んできたのは「家族の崩壊を助長する」などの反対論だ。しかし「選択的」制度は同姓を望む人の権利や信条を何ら侵すものでないことを、再確認しておきたい。
 子供の姓をどうするかを含めてそれぞれの家族の問題であり、選択肢の提供が多様な家族のあり方を保障するはずだ。むしろ互いに尊重し、信頼する関係があればこそ、姓の選択や家族のあり方を自由に話し合うこともできよう。
 少子・晩婚化により、仕事上の実績を積み上げてきた人同士、あるいは長男長女同士の結婚が増えることが予想される。選択的夫婦別姓の導入は時代の要請でもある。
 別姓をめぐる価値観は対立しがちだが、「生きづらさ」を抱える人たちの存在にまずは思いを寄せたい。多様な生き方や考え方が尊重される社会に向け、選択の幅を広げる議論を期待する。

ロード中 関連記事を取得中...
   
Copyright(c) The Ehime Shimbun Co.,Ltd. All rights reserved.
掲載している記事、写真などを許可なく転載、複製などに利用することはできません。
プライバシーポリシー著作権・リンク
愛媛新聞社のウェブサイトについてのご意見は、氏名・連絡先を明記のうえ、愛媛新聞社へ。