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リニア「大阪開通」で機能発揮

2045年の延伸、前倒しを…国交省審議会

 国土交通省の交通政策審議会中央新幹線小委員会は15日、JR東海のリニア中央新幹線計画を認める中間報告を公表した。東京、名古屋、大阪の3大都市圏を約1時間で結ぶことで、大きな経済効果が期待される。2045年に大阪まで延伸する計画については、「(全線開通で)初めて機能を十分に発揮し、効果を得られる」として前倒しの検討を求めた。しかし、延伸の建設費の手当てなど課題は多い。


◆変わる生活

 中間報告が「優位」とした「直線ルート」で東京から名古屋まで40分、大阪まで67分で結ばれると、出張や旅行が格段に手軽になる。

 会社員が日帰りで出張できる地域が広がるほか、中間駅が建設される見通しの山梨や長野などには、企業が進出する可能性もある。

 泊まりがけや日帰りの観光旅行も、移動時間が大幅に短縮される。「滞在時間を長くしたり、より多くの目的地が組み込めたりする」(大手旅行会社)ようになり、観光地のにぎわいが増すことにつながりそうだ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングは、リニア開通による企業利益の伸びや消費の拡大などで、27年の名古屋開業から50年間で10・7兆円、大阪開業後は16・8兆円の経済波及効果が期待できると見込む。

 ただ、東京への一極集中が進み、他の都市圏や地方経済が衰える「ストロー効果」の懸念もある。交通の便が向上して出張先での宿泊が減り、企業の地方拠点も不要になる上、買い物客が地方から流出するためだ。


◆大阪期待「前倒し歓迎、国も支援を」

 今後の最大の課題は、大阪延伸計画の前倒しだ。中間報告が検討を求めたことに、関西経済界からは歓迎の声が広がった。

 関西経済連合会の下妻博会長は「大変喜ばしい。27年に一気に大阪まで開業させるぐらいの覚悟で取り組んでほしい」とのコメントを発表した。

 現行の計画では、大阪延伸は、名古屋開業から18年も間が空くからだ。

 だが、JR東海が延伸の前倒しを実現できるかは不透明だ。建設資金は東海道新幹線の旅客収入や、借り入れなどで賄うことにしている。名古屋までの建設に伴う借金は、開業後8年ほどかけて減らし、財務体質を改善してから大阪延伸に取りかかる意向だ。

 山田佳臣社長は15日の記者会見で、「名古屋までの建設時に経営体力をできる限りそがず、なるべく早く大阪延伸に着手することが大事」と述べ、前倒しの可能性に言及した。

 だが、実現するには、建設コストの削減ぐらいしか有効な手段がないのが実情だ。

 大阪の経済界には、「国家的プロジェクトとして、資金調達手法など国の支援も含め、様々な方策を検討してほしい」(佐藤茂雄・大阪商工会議所会頭)などと、国の関与を求める声もある。(中部経済部 中村紘子、大阪経済部 山本照明)

2010年12月16日  読売新聞)

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