宇宙航空研究開発機構(JAXA)が13年度からの運用を目指す新型ロケット「イプシロン」の発射場が、肝付町の内之浦宇宙空間観測所に決まったことを受け、同町は喜びに沸いている。先代機の固体燃料ロケット「M5」が06年9月で廃止され、沈んだ空気に包まれた中に飛び込んだ朗報。早くも「多くのロケットを打ち上げて」と期待する声が広がっている。
12日午後、決定の一報が町に伝わると、本庁舎と内之浦総合支所に懸垂幕が掛けられ、防災行政無線で町民に“速報”が流されるほどの祝福ムードに包まれた。同支所には、町民から「よかったなぁ」と喜びの電話も寄せられたという。
誘致活動を続けてきた樋口弘志・同支所長は「半世紀にわたり成長を見守ってきた自負がある。ロケットは町の誇りであり、象徴」と話す。M5廃止から4年あまり、同町も他地域と同様、過疎高齢化が進み街全体が沈んでいたという。樋口支所長は「町民のほとんどが胸をなで下ろしたと思う。小型衛星の需要は多く、打ち上げ回数が増えて交流人口も増加してくれれば」と町の活性化に期待した。
観測所に近く、総合的な学習で宇宙教育を取り入れる肝付町立内之浦小(幸本美智也校長、115人)の児童も喜んだ。03年にはM5で小惑星探査機「はやぶさ」が打ち上げられた同観測所。地球に帰還したカプセルが同町でも公開され「児童たちに宇宙への興味が広がっていた」という。
M5の最後の打ち上げを低学年の児童は覚えていない。幸本校長は「ぜひ打ち上げを見せてあげたい」との思いから、誘致を願う看板を校門に設けた。「夢がかなったような感じ」と声を弾ませた。【川島紘一】
毎日新聞 2011年1月14日 地方版