宇宙航空研究開発機構(宇宙機構)が開発中の次期固体燃料ロケット「イプシロン」の射場を鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所(内之浦観測所)に決定したことを受け、地元は「ロケットが戻ってくる」と喜びの声があふれている。
内之浦観測所は1962年の起工以来、国内の宇宙開発の最先端を担ってきた。しかし、2006年9月にM5ロケットの運用が終了。宇宙機構は後継となるイプシロンの射場について、内之浦観測所を第一候補としつつ、同県・種子島の種子島宇宙センターへの統合も検討していた。
町は12日に決定の知らせを受けると、すぐに町内放送で住民にも報告。内之浦総合支所に祝いの垂れ幕も掲げた。
これまで「内之浦で打ち上げを」と国や関係機関への陳情を繰り返してきた永野和行町長は「ロケットは町民に希望を与える。内之浦、肝付の名を全国に広めるため、今後も全面的に協力したい」と話す。
打ち上げ時には関係者の宿泊や見物客などで町内がにぎわう一方、M5ロケットの打ち上げ時は半径2・1キロ以内の住民約120人が一時退避する必要もあった。
イプシロンでは退避区域が少し拡大する見込みだが、新たに退避区域に入るとみられる津代(つしろ)集落の振興会長倉(くら)昭さん(79)は「集落は全会一致で誘致賛成。不便があってもロケットが戻ってこないと内之浦は元気が出ない」と喜ぶ。
観測所の起工以来、打ち上げを撮影し続けている同町南方の写真店経営牧工さん(84)も「どんな一枚が撮れるか今から楽しみ」と、その日を心待ちにしている。
内之浦観測所の峯杉賢治所長は「住民の皆さんには心配をお掛けした。今後も種子島との両輪で鹿児島を盛り上げたい」と話している。
=2011/01/14付 西日本新聞朝刊=