2011年1月14日15時27分
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人気声優で歌手。そう紹介すると彼女の音楽世界のイメージを狭めるかもしれない。透明感のある歌声と表現力、作詞力は、名プロデューサー菅野よう子とタッグを組んだ初期から広く音楽好きに支持されてきた。
今年で歌手デビュー15周年。12日に7枚目のアルバム「You can’t catch me(ユー・キャント・キャッチ・ミー)」を出した。全曲、異なる作曲者を迎え、スネオヘアー、常田真太郎(スキマスイッチ)、桜井秀俊(真心ブラザーズ)には詞も委ねた。
「大人になると、新しい人や物に出会うことが面倒になるけれど、節目の今回はあえて新しい刺激を求めました」
収録曲の「手紙」は、ネコの目線で詞を書いた。「キミとボクのすきだったもの ポプラと みかづき」という詞の、かな文字のやわらかな響きも歌い表してしまうのは、演技者としての積み重ねゆえだろうか。
「児童劇団に入った頃から、何かを表現する場を持ちたかった。夢の一つとして歌手デビューしたものの、自分よりうまく歌える人がいるのにあえて私が歌う理由があるのかと自問してきた。ライブでも自分をさらけ出す勇気が持てなかった」
活動を重ねるうちに、「私の曲に共感してくれる人は、曲を通して坂本真綾ではなく自分たちを見ているのだと気付いた」という。「私は私のままでいい。今は『どうぞ好きに使って下さい』という境地」
アニメでは、「桜蘭高校ホスト部」で演じた男装の美少女ハルヒや「四畳半神話大系」の女子学生明石さんなど、めったなことでは声を張り上げず淡々と我が道を行くキャラクターがよく似合う。
「どちらも共通点が多くて、ほとんど素。私もすごくマイペースに見られるんです。内面的には、めんどくさいぐらい熱いと思ってるんですが……」
時代に流されたくないという。「10年後、20年後も聴いてもらえるスタンダードなものを、長く歌っていきたい」
ライブにも意欲的だ。「お客さんに聴いてもらって初めて曲が完成したと思える瞬間がある。アルバムで新しい扉を開いてもらった。新たな世界をライブを通して深められるかもしれない」。その予感を3月5日に始まる全国ツアーで確かめる。
(文・藤崎昭子 写真・郭允)