2011年1月14日14時1分
コンサルタントを招いてのセミナー。学生の多くがメモを取りながら耳を傾けた=東京都八王子市の東京薬科大
労働法令に触れるような過酷な働き方を強いる「ブラック企業」の見分け方を学ぼうという動きが、就職活動中の学生に広がっている。超就職氷河期といわれる厳しい雇用情勢に加え、企業の新卒採用主義が変わらないなかでは、最初の就職で失敗できないという危機感の高まりが背景にあるようだ。
「夜勤ということで働いているが、実態は昼間も働いている。異議をとなえると、パワハラが始まり退職願を出すよう強要された」
東京都世田谷区で昨年12月19日、実際にあった相談を題材にしたセミナー「ブラック企業の見分け方と対処術」があった。労働相談などに取り組むNPO法人「POSSE」が主催し、学生ら約40人が参加。労働問題に詳しい弁護士が「長期間働く女性がいるか、というのが会社の民主主義度を見分ける指標の一つ」と話した。
中央大3年の池田俊さんは「就職活動にあたって知識を持っておこうと参加した。福利厚生の充実度合いや数年上の先輩がいるかどうかなど、企業選びの参考にしたい」と話した。
POSSEには、学生からブラック企業に対する問い合わせも寄せられている。今野晴貴代表は「労務管理が確立されていない企業や、募集段階と採用段階で給与面などの条件が違ってくる会社は注意が必要」と話す。
大学でも同様の取り組みが広がりつつある。東京薬科大は12月22日、外部のコンサルタントを招いたセミナー「良い会社と悪い会社の見分け方」を開いた。情報開示の程度や現場リーダーの考え方に目を向けてほしい、という話を学生たちがメモを取りながら聞いた。
5年の戸原侑希子さんは「入った後でブラック企業とわかっても転職は難しい時代。少しでも見分ける基準が持てればと思う」と話した。
就職活動中に聞いた「企業の本音」を、卒業論文の題材にした学生もいる。関西大4年の女子学生(22)は、関西を中心に約150社の説明会や面接に参加し、友人の経験談も聞き取って、問題があると感じた企業をいくつかのタイプに分類した。
「うちは残業代を出さない」「女性は幹部にしない」などと違法性の強い働かせ方を隠さない「公言型」、若手の離職率が高い理由を問われてもきちんと答えない「説明回避型」……。