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『著作権の世紀』の著者、福井健策弁護士に聞く 「疑似著作権」広がり懸念 (2/2ページ)
「ペットの肖像権」や「菓子・料理の著作権」などの事例も。「ペットに肖像権があるなら、公園でかわいい犬を見かけて撮っても公表できない。有名店の料理が無断で撮られ、雑誌に載ったことについて相談を受けることもある。鑑賞対象になるほどの芸術性があれば別だが、料理の外観が著作物として扱われる例はほとんどない」
ケータイで手軽に写真が撮れ、ブログなどで気軽に公表できる…。「疑似著作権」が増える背景には、そんな社会環境の変化も大きい。福井弁護士は日本人の気質も挙げる。「日本ではクレームを受けること自体が悪、訴訟になったら大変という感覚がある。だからある程度、相手の言い分をのんじゃう。日本は『疑似著作権』をはぐくみやすい土壌をもっている」
もちろん、レストランなどでは周囲への配慮から撮影禁止にしているところもある。しかし、福井弁護士は、そんな「マナーの問題」とは別の意味のないところで「疑似著作権」が広がることを懸念する。
本書では、ほかにもデジタル化とインターネットの普及で、急速に変化する情報世界と著作権の現在がつづられる。福井弁護士が問いかける。「『情報の囲い込み』が進めば、いろんな混乱が先にみえる。一番の弊害は、社会がその情報を自由に使えなくなること。著作権は何のためのものなのか。考える機会がさらに増えるでしょうね」
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【プロフィル】福井健策
ふくい・けんさく 昭和40年、熊本県生まれ。東大法学部卒。平成15年に骨董通り法律事務所を設立。著作権保護期間の延長に異議を唱え、シンポジウムに参加するなど幅広い活動を続けている。著書に『著作権とは何か』(集英社新書)など。